ポニーテール
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※先天性女体化


掻き立てられたのは、ちょっとした嫉妬心と対抗心で。

「お、おま、おま、どないしてんその髪型!」

幼い頃からずっと伸ばしていた髪を、少しいじってみたのだ。

「……ちゃいますよ」

きっかけは彼とクラスメートの何気ない会話。けれどもそれを面に出すのはどうにもはばかられて、思わず否定する。

「はぁ?」

「別に、坊がポニーテール好きや言うん聞いたからとか、そないな理由やあらへんのです。ただ暑くて、辛抱ならんかっただけや」

「なっ……」

そして後から後から湧いてくる羞恥心に押し出されるように要らぬところまで明かしてしまった。
あっと思ったときにはもう遅く、慌てて最もらしいことを付け足してみるが勝呂の目は見開かれている。

「せやけどやっぱ、似合うわけあらしませんよね。こないな髪型はかいらし子ぉやないと」

(また、アホしてもうた。ほら、坊も驚いてはるやんか)

無言の状態はどうにも辛くて、ついでに内心も隠そうと、必死でいつものように軽口を叩くが上手くいかない。

「志摩、」

「それに、えろう首もとこしょばいですし。解こ」

不意に呼びかけられたが、現実を、似合っていないと言われるのが怖くて怖くて仕方がなくて、ならば言われる前に、と結び目に指を伸ばした。

「志摩!」

が、その指がゴムに触れるか触れないか、といった所でパシッと彼に掴まれる。

「っ、今解きますんでちょお待っ、」

真剣な表情の彼を視界に入れてしまっては最後、何も言えなくなる。分かっていたから今まで必死に視線を逸らしていたというのに。
もう逃げられない。
そう覚悟を決め、目をぎゅっと瞑った所で、予想外の言葉が耳に飛び込んできた。

「似合うとる。」

「はい……?」

恐る恐る瞳を開けば、目の前には真っ赤に頬を染めた勝呂がいて。

「充分似合うとる。か、かいらしで。」

「……その冗談おもんないですよ、坊」

「冗談でこないなこと言わんわこんドアホ!って志摩?」

つられて頬に血液が集まるのを感じる。

「なんもないです。」

どうやらめったに言われることのない褒め言葉が、予想以上に嬉しかったらしい。

「けど、あと少しこのままにしときおす。」

だから、たまにはこんなのも良いか、と用のなくなった手を静かに下ろしたのだ。



ポニーテール




110721



ツイッターにて大好きなフォロワーさんが志摩君のポニーテール絵を描いてくださったので衝動に任せてかきました。




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