指先に小さくキスを落とす
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※先天性女体化

「うえええ痛いいいいいい」

ぐでん、と年季の入った木の机へと凭れかかれば、ひんやりと夏には嬉しい冷たさが伝わってくる。
普段ならばそれだけで嬉しくて、目の前に座っている勝呂の肩を叩くのだけれど今日はそんな気にもなれない。
下腹部に断続的に殴られているような痛みが広がる。
それは女の子なら誰でも経験する女子特有の、生理とよばれるやつの仕業だった。
少し動くだけでドバドバと溢れ出てくる血液が気持ち悪くて仕方がない。
今はただ、気持ち悪さと戦うのみであった。

「ううぅ……」

そして鈍痛に呻き声を上げること数分。
ようやく授業が終わり、束の間の休憩時間が訪れる。
待ちに待ったこの時間、と意気込み、鎮痛剤を探すべくカバンの中を漁るが、薬が一向に現れる気配もない。
もしかして、と自室に思いを馳せた所でこつん、と額に何かが当たった。

「おい、」

そして聞こえてきた声に顔を上げると心配そうな勝呂と彼の常備薬が視界に入る。

「腹、痛いんやろ。これ使え」

忘れんなや、そう言って無理やり押し付ける彼の頬は少し赤くて、思わずふふっと笑みがこぼれた。

「おーきに、めっちゃしんどかったんです。助かりました」

「おん。……志摩」

「はい?」

と、勝呂は途端酷くまじめな表情を浮かべる。
何事だと釣られて気を引き締めるとそっと頭の上に手が載せられたのだ。

「ありがとーな。」

「え、えっ、どないしはったんです?いきなり」

そして発された言葉に思わず首を傾げる。
はて、自分は一体何か彼に感謝されるようなことをしただろうか。
頭上にクエスチョンマークを浮かべていると、先ほどとかわらないまじめな目で、しかし少し赤らんだ頬をそのままに続けたのだ。

「いや、お前が女に生まれてくれたから、俺とお前の交際は認められたんや。こ、こういうのかて女の方がえらい大変やゆうんに、それでも笑とるお前に何度も救われてん。せやから、ありがとう。」

「っ、」

その言葉に、息を詰める。
当たり前のように戦ってきた痛みに対して、そんな風に言ってもらえるとは思っていなかったからだ。
恥ずかしいやら嬉しいやらで心臓が痛い。

「坊のあほ。男前なこと言わんとってえな」

ドクンドクンと、体中に響く音があまりに大きくてどうにかなってしまいそう。

「また、惚れてまうやんか」

顔が、熱い。

「もっと惚れとけ、ドアホ」

そう言う勝呂の指へ、照れを隠すべく小さなキスをした。


指先に小さくキスを落とす








指先にキスをするのは「愛情」と捉える場合が多いようですが、「挨拶」「賞賛」「感謝」の気持ちを込める場合も多いようです

110719




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