さあ、夜がやってきた
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※裏注意

「雪男ー暇だー構えーっ」

ベッドの上にどかっと腰を下ろして、燐はそう言うとバタバタと動きはじめた。
日曜日の昼下がり。
雪男も今日は仕事の依頼もないようなので、久しぶりにゆっくりと休日を過ごそうとしていたのである。
しかし燐は不満を抱えていた。
不用心に外へと出て悪魔であることがばれてしまっては大変であることを分かっているため室内に居るのだが、なにぶん雪男が構ってくれないのだ。
せっかく二人で一緒に居るのに、先ほどから教科書にむかってばかりでこちらをチラリとも見てくれない。
そしてよく考えれば昼飯の時、美味しいよ兄さん、と言われたきり会話すらしていないことに気がついたのだ。
これでは、せっかくの同室であるというのにつまらないではないか。
燐は頬をむぅっと膨らませると、先ほどの言葉を発したのだ。

「構ってって……」

するとようやくその椅子を引いてこちらを向いたので、バタバタをやめてニカッと笑ってみせる。
それから座っていたベッドを離れて雪男のほうに近づけばふぅ、と溜息をついて教科書を片付け始めたのだ。
いつも何だかんだ言ったって、雪男は結局こうやって燐を構ってくれるのである。
そんな雪男の姿に燐は頬を緩める。


「雪男ー!好きだー!!」

そしてダダダッと駆け寄り思いっき抱きつけば椅子がギシッと嫌な音をたてた。

「ちょっと兄さん、片付けまだ終わってない」

むぎゅっと正面から抱きつかれた雪男はいたって冷静な声でそういうと、燐を引き剥がして机の上の整理を続行する。
すぐに構ってもらえると思っていた燐はしゅん、と少し落ち込んでしまった。
そんな燐に気がつかないのか雪男はすばやく教科書類を端に寄せ、机の上に落ちていた消しかすをゴミ箱向けて叩き落とす。
それからふと燐を向くと破顔したのだ。

「兄さんのそれ、分かりやすいね」

「えっ?」

雪男の指差すほうを見るとそこには悪魔の象徴である尻尾。
いつも上を向いているその尻尾は持ち主の心を表しているのか下にダランと下げていた。

「やっ、これは、その……」

すると感情が丸分かりだということに気がついたのか燐は急激に頬を染めるとふい、とそらす。
その仕草がどうにも幼少時代から変わっていない様に見えて雪男はクスリと笑みを零した。

「な、何だよ!」

「いや、可愛いな、と思ってね」

その言葉に一拍あけて耳まで赤く染め上げるとくるりと後ろを向いてしまう。

「お、弟に可愛いなんていわれても嬉しくねぇってのばか雪男!」

しかし丸見えになった尻尾がまるで褒められた犬のように左右に揺れていたため、その言葉がただの照れ隠しだということは容易に分かってしまうのだ。

「兄さんにばかと言われるのは心外だな。」

ガタッと音をたてて椅子から立ち上がればあからさまに震えた燐の肩。
そんな小動物のような姿が可愛くて、おもむろに雪男はそのピンと伸びた尻尾にそっと指を絡めてみた。

「ひっ、」

すると尻尾の毛を逆立てた燐がいやに高い声を漏らすではないか。
これはもしかして、と思いもう一方の手でその尻尾を付け根部分から上へと撫でてみる。

「ひあああっ」

さすれば今度は完全なる嬌声を上げて足を震わせたではないか。

「もしかして、ここ性感帯?」

ふと浮かんだ仮説を零せばビクンと波打った身体に確信する。
そして雪男は口角をくいっとあげるとこういったのだ。

「兄さん、構ってあげるよ」

その言葉に勢いよく振り向いた燐の唇を奪う。
口は驚きからか薄く開かれていたためすぐに舌を差し込むことに成功した。
ねっとりと舌を絡ませては歯槽をなぞり裏顎を掠れば、ふあ、と声を漏らす。
それに満足した雪男は燐の後頭部を掴むと一ミリの隙間をも埋める勢いで口付けを深めたのだ。
互いの唾液がまざりあい、飲み込みきれなかったものは燐の口端から零れ落ちる。
既に酸欠に陥りつつある燐は目にいっぱい涙を溜め、ふるふると震えながらも雪男のキスに必死に食らい付いていた。
兄として、弟に翻弄されるのは嫌なのだろう。
本当ならもう苦しくて苦しくてたまらないはずなのにそれでもまだ離してくれとは言わなかった。
しかし、雪男はそれに気がついている。
燐が息を吸うタイミングをつかめていないことも、勿論強がっていることも。
そして元来兄が大好きなのだ。
同時に雪男はできるものなら少しでも要望に答えてやろうというのが弟の義務だと思っている。
この後どうせ嫌というほどいじめるのだから今ぐらいはいいだろう、そう考えて唇を離してやった。
すると頬を上気させ、涙とよだれを零しはぁ、はぁ、と浅い息を繰り返す燐を直視してしまうことになる。
その表情はまるで情事の時に見せるそれで、無意識にごくり、と喉がなるのが分かった。
そして、もう止められないことも。
雪男は燐の手を引いて机に座らせると素早くバックルを外しにかかる。

「や、ゆきおっ…」

燐は抵抗を示すもあまりに弱々しく、それが形だけのものだということが見て取れた。
何より尻尾。
先端がくるりと巻かれたそれは、何かを期待するかのようにゆらりと揺れる。

「期待、してるくせに」

それに誘われるようにそっと指を伸ばせばいとも簡単に性器を掴むことが出来た。

「っん!」

まだ萎えているそこを強引に揉む。
すると溢れ始めた先走り液がパンツに染み始めた。

「兄さんのパンツ、灰色だから形まで見えちゃってる」

雪男がそっと囁けば燐は目をぎゅうっと瞑っていやいやと首を振る。
視角を失うと他の感覚が鋭くなることを知らないのだろう。
兄さんが馬鹿でよかった。そう溜め息と共に吐き出してからズボンを足から抜き取った。
露わになった細く白い太ももを唇でなぞりながら机の上に乗せて、正面から秘部まで見えるように体勢をかえさせる。

「や、恥ずかしいっ」

その動きに気が付いたのかパッと開眼して縋るような目を雪男に向けるが、雪男はそっと手を伸ばして目を覆った。

「見えてる方が恥ずかしいんじゃない?」

そうやってもっともらしくたしなめれば、燐は慌てて言われたとおりに目を閉じる。
そんな兄の動きを見届けてから、再度その姿をまじまじと見回した。
6階ということもあり、差し込む光が室内をよく照らしている中、紅く染め上げられた頬。
上半身は一切乱されていないのに、視界の端には肌色が映される。
細い太ももは羞恥からか小刻みに震えており、その奥には色の変わった下着が見え隠れしていた。

「ゆ、ゆきお、どうしたんだよっ……」

雪男に言われて自ら視界を閉じているせいで何も見えていない燐は突然無くなった雪男の体温に恐怖を覚えたのだろう。
不安そうな声色でそう言う燐に、ならば目を開ければ良いのにとも思うのだが、それでも彼が雪男の言うことを守っているという事実にまるで彼の感覚をも支配したかのような優越感が押し寄せてきた。

「兄さんが、綺麗だなって思ってただけだから気にしないで。」

しかしそんな感情はおくびにも出さず、ただただ視覚的に感じたことのみを正確に告げる。

「……!!ばっ」

「それとももう我慢できなくなっちゃったとか」

それからまだ触れていなかった秘部に下着越しに指を沿わせればその身体がビクンと震えた。

「ひっ」

布に阻まれているため浅い所を撫でれば、嬌声に似た声が漏れる。
執拗にそこを撫でれば断続的にそれが零れはじめ、いささかひくつき始めた。

「ふあ、あ、ん、っんん」

しかし喘ぐのが嫌なのだろうか。
必死に口を押さえて声を出さないようにしているらしい。
けれど、雪男は面白くなかった。
だって、燐の声が聞こえない。

「っっっ!ひあああっ、っう」

下着の隙間から指を差し入れて直接秘部を突付けば突然に大きな声を上げて喘ぎ始めるではないか。
押さえていたわりにはあまりにも大きくて驚き燐を向けば、机の上に上げた足を抱えてビクビクと震えていた。
一体どうしたというのだ。
慌てて原因を探そうと燐の周りを見渡しても何か増えた様子は無い。
燐の身体がただ机の上に乗っているだけで、他には何も変化点は無いように思われた。
しかし、はたと気づく。
これではまるで人間ではないかと。
もしやと思い膝裏を掴んで足を持ち上げれば、やはりそこに違和感の元凶が。

「兄さんもしかしてこれ、自分で入れたの?」

そう、悪魔の象徴であるそれが深々と秘部に突き刺さっていたのである。

「わかな、けどっやら、抜いてっ……抜いてっゆきおおっ」

まるで尻尾そのものが意思を持ったかのようにうごめいて燐の内壁を刺激するために腰をビクビクと跳ねさせ、イヤイヤと首を振った燐の目からは涙がこぼれた。
そして雪男はといえば酷くいらついていたのだ。
確かに尻尾は燐のものだ。
燐の臀部から伸びているのだから、これは間違いない。
けれども、嫌なのである。
たとえ、たとえそれが燐の尻尾であろうと、指であろうと何であろうと、燐の秘部に何かを入れて燐を泣かして良いのは自分だけだと雪男は思っているのだ。
雪男は無言で尻尾を掴むと容赦なくそれを抜き取った。

「あ、あああっ、ああっ!」

内壁が容赦なく擦られ、燐は今まで閉じていた目を開いて絶叫する。
ドクン、と性器からは白濁が零れ落ち、穿いたままだった下着から溢れ出した。
放心状態に陥っている為かその目は虚ろで頬には一筋の涙。頬は真っ赤かで、それから口元には銀の糸が伝っている。
なんといやらしい表情だろう。
雪男はいつの間にか張り詰めていた自身の性器を、もう押さえることが出来ないことを悟った。

「兄さんが、悪いから。」

「ふ、あ?」

そう言って眼鏡を外す。
それからぼやけてしまった視界の中で、的確に秘部へと性器を擦り付けそしてそのまま一気に腰を押し付けた。

「ひ、ああああっああ!」

慣らしていないにもかかわらず雪男のそれを根元までズッポリと飲み込んだそこは酷く熱い。
そしてあまりに突然の刺激に燐の意識の靄が消えたようで、とっさに雪男の首へと自分の手を回したのだ。

「く、兄さん、キツイよ……!」

「あ、ひ、はあ、」

息が上手く出来ないのかはふはふと浅い呼吸を繰り返しているが雪男にはそれを気遣う理性など既に残っていない。
ただただがむしゃらに腰を動かして掻き抱けばそれに答えるかのようにギュウギュウと締め付けてくる秘部が愛しくてまた胎内で成長させた。
そしてとろとろに蕩けてしまいそうなそこはいつの間にか雪男の形に変えられており、あまりのフィット感に既に絶頂を垣間見る。

「ゆきお、も、むりっ」

すると流石双子、とでも言うべきか燐が雪男に先立って絶頂を訴えた。

「僕、も……!」

それに同調するようにして限界を明かせば、じゃあ一緒に、と立てていた足を腰に絡めてくる。
お陰で腰が動かしやすくなったため、ラストスパートに向けてより早く抜き差しすれば内壁がひくひくと痙攣し始めた。

「あ、ふあ、あっ、や、ああっあああっ!!」

そして、最後の一突きと最奥に埋め込んだその瞬間、雪男と燐の性器は同時に白濁を噴出したのである。
それから燐はどくん、どくんと中に送られていく精子を感じてふにゃりと笑った。

「あーあ、俺が雪男の子、生めたら良いんだけど。そしたら構ってもらわなくったってよくなるのにな」

首にかけていた手を腹部に移動させてゆるゆるとさすると何故だか生命が息吹く気がする。
もしこの腹に子を宿せたら。
それはそれは素敵なことだと、ふと思ったのだ。

「馬鹿だな兄さん。」

しかし雪男は笑ったままその考えを否定する。

「それじゃあ、今度は僕が兄さんに構ってもらえなくなるだろ?」

そして言葉に燐は驚いた顔をした。
まさか、雪男がそんなことを言うとは思わなかったのである。
馬鹿にされているのだと思った、たった一瞬の内に生まれた莫大な悲しみが嘘のように消えていった。

「し、仕方ねーな!雪男がそこまでいうんだったら、生まないでおいてやるよっ」

それからこういえば雪男も目を見開き、それから兄弟は互いに顔をあわせて微笑む。
その後ろには大きな夕日。
先ほどまで真上にあったはずの太陽が、もう地平線へと沈もうとしているのだ。




さあ、夜がやってきた


110515



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