バカみたいに純情
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ジリジリと照りつける太陽が肌に痛い。
パタパタと手で風を送っても生暖かな風しか来ない為、もう諦めた。

「ぼぉーんー、寮帰る前にどっか寄ってきまへん?京都もそら暑かったですけど、ここは異常ですわ……」

もう溶けてまいそうです。そう勝呂に訴える廉造の頬には汗が伝っており、カッターシャツの下に着たTシャツが憎たらしい。

「そない厚手な服中に着とるからやろ。もうじき涼しなるやろし、ちょお我慢せえ。」

一方で、少し前を歩いている彼からは暑さを感じない。

「そういう坊は暑ないんですか?逆に可笑しいで……変態や……」

「なっ、変態とは何や変態とは!ただ俺は心頭滅却すれば火もまた涼しということをやなぁっ!」

と思ったのだが、少し近寄ると首筋に一筋汗が伝うのを見つけて、やっぱり、と思わず笑みがこぼれた。

「とかいうて、やっぱ暑いんやないですか。汗、かいとりますよ。」

そしてポケットをまさぐって見つけたハンカチを差し出せば、おおきにと素直に受け取り拭き始める。
その様子をただ無心に眺めていると、ふと勝呂が廉造を向いた。

「お前もかいとる」

それから額に少し貼りついた髪の毛を掻き揚げ始めたのである。

「うえ、え、どないしはったん?」

彼の意図が読めずに一人焦っていると、やがて全てを掻き揚げ終わったのか満足げに頷く。
そして次の瞬間、そこに何やら違和感を感じたのだ。

「ぞえええっ、ぼ、ぼ、ぼぼぼぼ坊んんん!?、何しはりますん!?」

冷静にならなくたって分かる、それはまさしく勝呂の唇で認識した途端にそこだけが熱を持つ。
だが、思わず頬に手を添えると顔全体に血液が集まっていたことに気がついた。

「あんまり暑いさかい、脳みそでも溶けたんやわ。」

そんななか、勝呂が少し頬を染めてらしくもない事を言うのだから雨が降ってしまいそうだと思う。

「せやしはよ帰るで。」

と、照れを隠すためかクルリと前を向くとスタスタと歩いていってしまう彼。

「ちょ、待ってくださいよー!坊のいけずっ!」

その背中を慌てて追うついでに手を伸ばしてその指に絡めて見たり。
ばっと振り向く彼にゆっくり笑いかけて、それからぎゅっと握って、寮に着くまでですからと強請れば、少し考えた後にしゃあないなぁなんて言って更に強く握り返してくれた。
すぐ目の前には大きな寮が見えていて、あと歩数にして20やそこらだろうか。
廉造はこの幸せな時間が少しでも長くなるように、ほんの少しだけ歩幅を小さくしてみるのだ。



バカみたいに純情




110716



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テーマ「人外ファンタジー」
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