悲恋告知
―――――――




※短文



お揃いのパジャマに、おそろいの枕。
たったそれだけの事実に浮かれていたのだとタクトは思う。
スガタに近くなれたような気がして、調子に乗って。
もしかしたら自分がスガタの一番になれたんじゃないかと錯覚したのかもしれない。

寮でのぼや事件後、タクトはいつもスガタと二人で帰路についていた。
他愛も無い事を話すのが楽しくて、ついつい永遠に続けば良いと思うことが多い時間である。

(確か今日は昔のスガタの話を聞けるんだっけ)

昨日チラリと言っていた言葉をしっかりと思い出しながら、帰る用意をしっかり整えスガタの机へと訪れたのだが、そこは何故だか異様な空気が流れていた。

「スガタ、ワコ、どうしたの?」

「あぁ、ワコに話があるんだ。タクト悪いが先に帰っていてくれないか」

そしてスガタが発したその言葉に一気にモノクロの世界へと引きずり込まれる。
周りではキャーという歓声が上がった。
しかしそんなものが無くったってタクトはスガタがこれからワコに何を言うのなんて手に取るように分かってしまう。
つまりは、そういうこと。
タクトは目頭がカッと熱くなるのを感じた。

「タクト?」

と、結構長い間返事を返せていなかったらしい。
心配そうな瞳で覗き込んできたスガタ。

「あ、あぁ分かった。じゃあ先に帰っとくよ」

その瞳から逃れたくて慌ててそう返事をしてから、ヨロヨロと教室を出た。
後ろからは、ワコ様を取られるのが嫌なんだわ!なんという三角関係!などと囃し立てる声が聞こえてきたが、その言葉の誤りを正す気すらしない。
今はただただ零れ落ちそうな涙を目元で留めることだけに神経を使った。
知らず知らずのうちに早足になる足をそのままに一心不乱に校門を目指す。
そこを抜け出から幾つもの道を駆け抜けてあの丘までやってきた。
スガタの本音を知った、あの丘である。
一番高い所はちょうど夕日があたり、まるで父が描いたというあの絵のように素晴しい景色だ。
そこに、はぁ、はぁと荒い息がやけに響く。
何にも縋ることの出来ないそこへ崩れるようにしゃがみこむと、堪えていた涙が一気にせりあがってきた。

「っう、く……うううっ…ふ、」

大粒の涙が溢れては落ち、落ちては流れる。
知っていたのだと、タクトは唇をかみ締める。
本当は彼が自分のことなんてどうでも良いと思っていることは以前から彼の動作の端々に現れていた。
スガタはただ、ワコが好きで好きでたまらなくって危うく彼女を壊してしまいそうだったから、その欲望の捌け口にタクトを当てはめていただけなのである。
そしてそうして欲しいと願ったのはタクトだった。
少しでも彼に近づきたくて、愛を感じたかったのかもしれない。
けれども何度肌を合わせようとも、心は遠いままで。
そのとき初めて心の距離というものを知ったのだ。
そして、今日をもってタクトの役割は終了する。
それは残酷なほどにあっさりと告げられるだろうし、そのことに関してスガタが心を痛めることなどもないだろう。
そして、タクトも未来の事実を予感している。
こんなこと、簡単に分かることだと、タクトは弱弱しく微笑む。
なぜなら、一度だって愛を囁かれたことなど、無かったのだから。






悲恋告知

(一度で良いから、愛して欲しかった)





スガタク目線で見るとアニメはすごく切ない感じに終わるんだろうな、と思います。


110220



―――――――


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -