特別な日には君を
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12月25日、即ちクリスマス。
恋人達のための聖なるその日に、来良学園はチャイムを鳴らした。

「何で……」

頭を抱えた正臣は叫ぶ。

「何で!よりにもよって!今日!学校があるんだぁぁ!」

「まぁまぁ落ち着きなよ。」

「せっかくのクリスマスなのにぃぃ!何で今日に限って土曜に授業あるんだよ……。てか帝人!何でお前はそんなに落ち着いてるんだぁ!」

「うーん、何でだろ」

「何でだろって……」

はぁ、と正臣は溜め息を吐いた。
今年は何時ものクリスマスとは重要度が全然違うと正臣は思っている。
何故なら今日は帝人と付き合い始めてから初めてやってくるクリスマスだったのだ。
だから、正臣は今日の為にずっと前から色々な物――主に料理だが――を振る舞う予定を立てていたのだ。
にも関わらず、イレギュラーに入ってきた土曜日の授業。
正臣のテンションはだだ下がりである。
たった一つ、幸いしたことはと言えば午前中で授業が終わることだった。
そして、なぜ自分たちは学校に来る必要があったのだろうかと思うくらい何でもない授業が過ぎ去り、待ち望んだ放課後が訪れる。
今日は杏里が休みだったので、珍しく二人での下校だった。
正臣が先陣を切って口を開いた。

「帝人ー、今日一回俺ん家寄ってからお前ん家行って良いか?」

「え?あ、ああ、別に良いけど……。ていうかさ、一回帰るんなら正臣の家でも良いんじゃない?」

「うーん別に良いんだけどさー、でも俺んち両親いるから……さ」

けれどもその様子は頬を掻きながらどこか言いづらそうな声である。
帝人はしばらく考える素振りをした後、ニヤリと微笑むと口を開いた。

「何?それは僕とイチャイチャラブラブしたいってこと?」

その言葉にカアッと赤くなり、それでも強がる正臣。

「うぅっ、……そ、そうだよ悪いかっ!」
「ううん、全然。あっ、でもその前にちょっと寄りたいとこあるから行っても良いかな」

けれど、そんな努力虚しく簡単に返されてしまった。
別に突っ込んで聞かれたかった訳ではなかったのだけれども何とも複雑な気分である。
しかし、それよりも気になる言葉があったため、会話を続行することにした。

「どこかって?」

「正臣が行きたい所」

即答、である。
全くもって意味が分からないと首を傾げつつ、

「それじゃ答えになってねぇって」

といえば、帝人は顎に手を当てて唸った。
それからポンと手を打つと驚きの一言を口にする。

「じゃあ……そうだな、正臣が欲しい物をプレゼントしたいから、正臣に誕生日プレゼント選んでもらうため。これで良い?」

それから笑顔を一つ。
その後暫くの沈黙が二人の間に流れ、漸く言葉を理解した正臣は再度耳まで真っ赤になると俯いてしまった。

「ちょ、正臣?」

「帝人はずるい……」

「?何が?」

「だってさ……いっつもそうやって俺を喜ばせて……ずりーよ、俺だって帝人を喜ばせたいのに!」

ポツリ、と零れたのは正臣からの確かな愛の言葉。
今度は帝人が赤らむ番だった。

「正臣だってずるいよ。いっつもいっつも可愛いことばっかり言ってさ。僕を惑わせるんだもの。」

そういって腕で顔半分を覆うような体勢を取る帝人を見た正臣は、ぷくく、と噴き出した後彼に抱きついた。

「うわ!どうしたの正臣、ここ学こ……」

「へへへ、あのさ帝人、別に何処にも寄らなくて良いぜ?」

「え、なんで?僕からのプレゼントは必要ないの?」

「ちがくって、俺が一番欲しいのは帝人、だから……」

そういって照れ隠しをするかのように帝人の肩に顔をうずくめる。
触れ合っている心臓はトクン、トクンと波うち、お互いの顔を見ずともどんな表情をしているかなんて手に取るように分かってしまう。
それが嬉しいような恥ずかしいようなくすぐったい気持ちになりながらも二人は赤く染まった頬を隠すように抱きしめ合った。

この5分後、二人はやっと顔の赤みが取れ、通常に歩くことが出来るようになる。
そして、その10分後には正臣がサンタの格好して料理を作れというなんともマニアックな注文を受けることになるのだった。









特別な日には君を


101224




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