I protect you.
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学校からの帰り道。正臣は何時も通り二人の一歩後ろを歩く。

「やっぱり何度見ても杏里はエロ可愛いなぁ」

「えっ、ぇえ!?あの・・・!?」

「だからエロは無いよエロは!」

「なんだよー、杏里はそこら辺の女の子よりもずっと魅力的だぞ?」

「それは!・・・そうだけどさぁ」


話ながら正臣は空を見上げる。真っ青な空に吸い込まれそうだ、なんて考えていればいつの間にかその会話は終わっていて、かわりに帝人が一生懸命杏里に話しかけているのが見えた。
これでいいのだと思う。自分はこの二人を一歩下がった所で見ていれば良いのだと。そう思いもう一度空を見上げようと顔をあげた時には、もう既に黒い影が正臣に降り注いでいた。

「みぃつけた。俺の可愛い可愛い正臣・・・」

「んんっ!?ーーーーー〜っ!」

口に手を押し付けられ、声が出せない、息が吸えない。抵抗しようにも酸素の足りないからだではろくに力も出ない。
パッと親友の背中を見るも向こうは気づかない。気付いて、と胸のなかで叫ぶも、振り返る様子も見受けられない。
そんなことを考えている間にも親友との距離は開いていくばかりで。
気がついたら路地裏の壁に打ち付けられていた。

「いっ・・・」

背中を襲う痛みに顔を歪ませると、目の前に立つ男がニヤリと笑った。キッと睨み付ければ何故か息を荒くする。そして首筋にゆっくりと近付いてきたその顔に本気で恐怖した。

くん、と鼻が匂いをかぐ動きをする。

「やめ、」

「はぁぁぁ、良い匂いだよ正臣・・・」

思いっきり息を吸い込み幸せそうな声を出し、そのまま息を吐く。首筋に当たる熱の篭った息にぞわりと戦慄した。

匂いを思いっきり堪能したらしい男は、ガバリとパーカーを大胆に捲る。

「いや、やめっ、ひぁっ!」

腹部から胸元にかけて、舌で何度も往復する。ヘソを甘咬みし、ウエストをなぞり薄く出た肋骨を隙間なくなめる。

「正臣はどこもかしこも甘いねぇ?砂糖みたいだ。」

「も、やめっ、ろぉ!」

なおも舐め続けようとする男の顔を押し返そうしてやっと気づく。己の腕が手錠で拘束されているという事実に。

「うそ、だろっ・・・」

ある種の絶望を感じている正臣をよそに胸部へと到達したそれは回りをぐるりと舐めた後、ツン、と尖った部分に触れた。

「っん、」

漏れそうになった声を必死にこらえる。そこで何かを感じ取ったらしい男が愛撫の手を止めた。

「あれ?もしかして正臣は男の人とエッチなことするの初めてじゃないのかなぁ?」
「知らなっ・・・」

「ふうん、そっかそっか、初めてじゃないのかぁ。じゃあさぁ必要ないよねぇ、前戲なんてさ。」

「は、え?」

そっか、なら早く言えば良いのに、なんてブツブツ言いながら正臣のズボンをズルリと落とす。

「ちょ、は、やめろ!」

自由に動かない手で必死に抵抗するも、最後の砦である下着は無情にもストンと落ちた。
途端顔を赤らめる正臣。

「みるなぁっ・・・!」

しっかりと立ち上がっている自身を隠そうと足をモゾモゾする。

「俺の愛撫、そんなに気持ち良かったんだねぇ、正臣。」

男はどすん、とその場に腰を落とすと正臣の腰を掴んだ。そしてグイっと引っ張る。

「うあっ!なにぁぁぁあああああ!」

ズプリ

正臣の後ろが男の欲望をくわえた音がした。

「ははは、入っちゃったねぇ、正臣ぃ?」

「ああっあ、あ、ひぅあ」

重力のせいでどんどん奥へと突き進んでいくソレに足が痙攣する。やがて全て入りきった時、正臣の欲望は精を放っていた。

「俺の、そんなに美味しいの?すごくギュウギュウしてるよ?」

後孔に指を沿わせてヒクつくそこに触れると、正臣の身体はビクリと跳ねる。その様子に耐えられなくなったらしい男が腰を揺さぶり始めた。

「あっ、はぁっあ、ひゃぁ、やめ!」

口から漏れる嬌声と、否定の声。

それらは暗い路地裏に響き渡っていた。
















♂♀

「あれ?そう言えば正臣がいない・・・」
最初に異変に気がついたのは帝人だった。続いて杏里が振り向いて首をかしげる。

「迷子でしょうか・・・」

そんなはずは、と言いかけて何かが脳裏をよぎった。イヤな予感がする。ドキドキと忙しなく動く心臓を深呼吸して落ち着かせるとケータイを取り出し電話する。プルルルル、プルルルル、プツン。数回鳴ってそのまま切られた電話に足元の地面が無くなった感覚に陥る。

「園原さん・・・」

ガラリと雰囲気の変わった帝人に杏里は事態の全てを理解した。

「私も行きます。」

「危ないって!もし園原さんまで巻き込まれたら・・・」

「私は大丈夫です。それに紀田くんが心配ですから」

「・・・分かった。じゃあ僕は路地裏の方を探すから、園原さんは大通りを。」

それだけ言うと、帝人は駆け出した。

走る、走る、走る。
周囲の人影の残像に正臣の姿がないかを瞬時に確認しながら走る。
路地裏に入り、入り組んだ道を駆ける。
正臣の無事を祈り、ただ走る。
服が汚れるのも、足が様々な物を蹴るのもお構い無しに。


そして、路地裏の中程のそこ。
大通りからは確実に見えないであろうそこに、見つけた。

帝人はゆっくりと近づいていった。
















♂♀

突然。そうそれは突然だった。

ピタリ、と首筋に当てられた無機質な何かによって、火照った身体から熱が退き、変わりに首筋がぞわりと粟だつ。後ろにいるであろう人間自体からは何も感じられないのだが、首筋に当たっている何かからはくっきりと殺気を感ぜられた。誰が、という純粋な疑問が浮ぶものの、恐怖のあまり首がスムーズに回らない。それでもなんとかギギギと動かして顔を見た瞬間、声にならない叫び声があたりに響いた。

「何、してるんですか?」

「あ、あ、」

カタカタと震える男に半分意識が飛んでいた正臣が目を覚まし、くるりと後ろを向く。そして目を丸くして口をパクパクと動かした。

「何してるんですか、って聞いてるんです。」

カチッ、という音と共に先程よりも鋭いものが飛び出し、首筋にめり込んだ。そこで男はやっと理解する。自分の首筋に宛がわれているものがボールペンだと言うことを。だが、理解しても消えない恐怖に恐怖した。

「取り敢えず、正臣から離れてください。」

温度の無い声で言われ、知らず知らずのうちに正臣から手を引いていた。自身を抜き取ったときにひゃぁん、と可愛らしい声が聞こえたが、それよりも恐怖の方が勝った。

「正臣、おいで」

その声に覚束無い足で歩く正臣。まるでマインドコントロールされているかの様な姿に驚く。そのまま抱きついた正臣を慈しむように抱きすくめ、そして再び温度の無い視線を向けられた。

「消えろ。」

そこからはコンマの世界。

完全に震え上がった男はスクッと立ち上がり脇目もふらず逃走する。
そんな男をそのまま逃す筈もない帝人の手には見知らぬケータイ。
パカリと開けてどこかに電話する。
ついでにケータイの中の盗撮画像を確認して、ケータイをパタンと閉じる。
そして意識を完全に正臣へと向けた。

「正臣、大丈夫?」

「ふぇっ・・・帝人ぉっ・・・!」

すがりつく正臣の髪を愛しそうに撫でると、珍しく見えるつむじに口付けを落とす。

「ごめんね、遅くなって。」

そんな謝罪にふるふると首を横に動かして顔を上げる。

「ありがとう、帝人っ・・・ありがとう・・・!」

涙の溜まった顔で精一杯の笑顔を向けた彼に、啄むだけの優しいキスを顔中にふらせた。

それを目を閉じながら受け止めていた正臣が急にモゾモゾし始める。

「どうしたの?」

尋ねると向き合っていた顔を思いっきり反らせた。そして口を開く。

「あの、さ・・・」

「ん?」

「その・・・」

良く見なくても赤くなっている耳に気がついた。彼に気付かれないようにくすりと笑うと帝人は催促する。

「なぁに、正臣。ちゃんと言わないと分からないよ?」

再度頭を撫でればビクリと肩を震わせそして、

「帝人ので、消毒して・・・」

二つの影が路地裏に沈んでいくのだった。















I protect you.

(君を守るためなら)(僕は犯罪だって犯してみせよう。)















まさかの続きました。
しかもオチが迷子ですいませんorz
久々に裏を書いたら別人になりました。
そしてモブがきもいっすね・・・









100612



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