「帝人・・・?」
うん、おかしい。実におかしい。帝人が何食わぬ顔で持っている物はその場にそぐわない不思議な物。
「絶対可愛いって。僕が保証するから。」
にっこり笑いながら押し付けてくるソレに鳥肌がたつ。
「いや、そう言う問題でなくてだな、」
「絶対似合うよ、だって正臣は可愛いもの。」
「っ・・・!だからっ!!」
不意打ちで言われた可愛い、という言葉に不本意にも反応してしまった自分を憎みつつありったけのにらみをきかせれば、
「何、誘ってるの?」
と返された。何と言う事だ、と頭を抱えたくなったが今弱みを見せてはいけない時だと自分を叱咤する。
「違うっての!何で、今俺はこんな服を着なければならないのかを10文字で答えろ!」
「結婚式のお色直し用」
沈黙。呆れて声も出ない、出せない。
「・・・帝人、」
「何?」
「もうちょっと詳しく言ってみようか。」
「えぇー、10文字でって言ったのは正臣だよ?」
「良いから!」
もう、仕方ないなぁ、なんてブツブツ呟いているのはあえて無視する。普段ならジェントルマンな俺!無視なんて出来ないししようとも思わないが今は別。たったいま重大な発言があった気がするのは俺の気のせい・・・
「だから、僕と正臣の結婚式のお色直しで着る服選らんでんの」
だと信じたかった。呆然。呆れて口を閉じることが出来ないくらい。
そして帝人は重大なことを忘れている気がしてならない。
「なぁ、帝人?」
「なに、着る気になった?」
「いや、それはまぁ一旦置いておこう。帝人は俺と帝人の性別を今一度確認する必要がある!まさかとは思うが俺を女だと思っているのならそれは間違いだからな!」
ビシッと指を突きつけて叫べばきょとんとした帝人。そしてプッと吹き出すとそのままケラケラと笑い始めた。
「何言ってるの正臣!正臣は男だよ。流石の僕でも正臣の裸を何度も見てるんだから女の子とは思ってないよ。」
「おま、裸とか言うなよっ・・・つかそれなら何でっ!」
顔を赤らめてキャンキャン言う正臣に帝人は頬を緩めているのだが、正臣はそれにすら気が付かない。
「だいたい俺は男でお前も男で!お色直しとかそれ以前に結婚出来ないからな?俺たちは・・・」
どんどん小さくなっていく声は微かに震えていた。それはまるで何度も自分に言い聞かせているようで、帝人は思わず正臣を抱き寄せた。
ピクリ、と跳ねる肩に愛しさが募る。
「でも、それは日本だけの話でしょ?僕はね正臣。君と結婚できないのならこの国を捨てたって良いって思ってるんだよ?」
「みか・・・」
「だからさ、二人で外国に行こうよ。知ってる人なんて居ない世界に。」
「・・・」
「僕は正臣が居ればそれで良いよ。正臣もそうでしょ?だから、さ。」
静かに頷いた正臣をもう一度強く抱き締めた。
それでは二年後の春に、
(二人でLAに行こうか。)(・・・ヨーロッパが良いな。)(それは新婚旅行で、ね?)
大変遅くなりましたが、結婚シリーズ第二弾の帝正です!
最初の方のコスプレ話は跡形もなく消え去りましたね
100609