本当は、
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「っ!!・・・はぁっ、はぁっ」

夢を見た。薄暗くて現実に近い、とてもとても怖い夢。ドキドキと心臓が煩い。

「はぁっはぁっ・・・よかっ・・・夢、か・・・」

身体を起こして布団をギュウッと握りしめる。指が真っ白になるほど力を込めているのに、身体中の震えが止まらない。大きく息を吸って、止めて、吐いて。それを何度か繰り返す内に心の中な荒波はなんとか落ち着きを取り戻していった。

そして、次に正臣を待ち受けていたのは真夜中故の静寂。
日中の騒がしさはどこにやら、今では田舎のそれより静かである。そしてそれは正臣を錯覚させるには十分だった。
自分だけが、この世界から切り離されてしまったのではないか、と。

気が付けば携帯を耳に押し当てていた。プルルルル、と無機質な呼び出し音が部屋にこだまして、さらに正臣を恐怖させる。
早く、早くと心の中で念じる。
カチッカチッと一定の速度で時を刻むはずの秒針はいつもよりゆっくり動いているような気がしてならなかった。



―――はい、折原です

「っ!臨也、さん・・・!」

ホロリ、と熱いものが頬を伝う。

―――君か。今何時だと・・・正臣くん?

「臨也さんっ・・・臨也さんっ」

一度流れ出したそれが止まることはなく、頬に幾筋もの線を刻んだ。

―――どうしたの、正臣くん。

いつもとは違う、優しくて慈しむような声に少し落ち着き、ズッと鼻を啜る。

「こわい・・・夢を見たんですっ・・・世界に一人残されるっ・・・夢をっ・・・」

そしてポツリ、ポツリ、と言葉を落とせば臨也は黙って聞いてくれた。

「それでっ、怖くなったんですっ・・・!もしかしたら、本当、に俺だけ残されていたらって・・・」


―――正臣くん。

ピクリ、と肩が跳ねた。
低くて響くその声が耳に染み渡る。

―――俺は、きっと君から離れない。ずっと、君が死ぬまで抱き締めてあげる。だから、

一度言葉を切り、息を吐き出す音が聞こえた。

―――だから、泣かないでよ。

「ーーー〜っ!・・・はいっ・・・はいっ・・・!」

再び正臣の瞳から熱い滴が溢れ出す。

―――とりあえず切るから。君もちゃんと寝なよ?

続いてプツリ、と回線が切れる音。
再びツー、ツー、と無機質な音がするが、もう正臣がその音に恐れることはなかった。

「ありがとう、臨也さん」

伝えることの出来なかった言葉を小さく呟いてから思案する。


(俺なんで臨也さんに電話したんだろ。帝人でも良かったのに、なんで・・・)

着信履歴を見ても折原臨也という名前は見つからない。そして発信履歴の一番上にあるその名前を見た時に少し心が暖まった気がして慌てて首をふる。

(俺は臨也さんなんて、嫌い、嫌いなんだ!嫌い、なのに・・・)

しかしその言葉を口に出すことは出来なかった。口を開いても、その言葉を拒んでいるらしい。


正臣は気が付いていたのだ。
無意識の内にアドレス帳から臨也を探していたことを。
この感情が何と呼ばれるものかを。


そして気付いてもなお、それらに気づかないようにしていることを。

















本当は、

(気付きたくないだけだった。)(大嫌いで仕方ないあの人が大好きだなんて)













たまにはピュアな正臣を書きたくて・・・
臨(→)←正です。珍しいですよね、この形w















100608



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