ぷち、とテレビを切って天井を眺めた。
宵の口にも関わらず部屋の中は暗くて寂しい。
「帝人の声、聞きたいな・・・」
知らず知らずの内に呟いたその声に自分自身で苦笑して、かたりと立ち上がった。
携帯に手を伸ばす。
ピッと発信履歴を呼び出せば同じ名前がズラッと並んでいて何だか擽ったい気持ちになった。
不意に手が震える。ボタンを押すのを戸惑うような、躊躇うような手の震えに気が付かないふりをしてピッ、と通話ボタンを押す。
プルルルル、プルルルル
呼び出し音が鳴り響く。おかしい。普段ならワンコールで出ると言うのに。暫く呼び出していたら、なんとか繋がったらしい。
―――もしもし、竜ヶ峰ですけど
電話から帝人の声が聞こえた瞬間、心が身体が満たされた。あぁ重症だ、なんて思いつついつものように言葉を紡いだ。
「あ、帝人か?俺俺っ、皆のアイドル紀田正臣!」
―――どうしたの?さっきまで会ってたじゃん。
「んー、ラブコール?」
―――・・・意味分かんないんだけど
「まぁ、お前の声が聞きたかっただけだから」
―――冗談は良くないよ?
「あああああ!だから!冗談じゃねえっての!」
と、その時ガタリ、と音がした。部屋の中ではなく、携帯の向こうから。そしてくぐもった知らない声。もしかして、という考えがぐるぐると頭の中を駆け巡る。
「帝、人・・・?」
―――あぁごめん。今日帰りに拾った猫がミルクを溢したみたい。
「でも、声が・・・」
―――テレビの音だよ。ごめん、ちょっとミルクの処理しないといけないから、切るね?
「え、あ、うん・・・」
―――電話ありがとう。正臣からの電話ならいつでも嬉しいから。じゃあね。
プツリ、と無情にも切られた電話。
部屋に静寂が訪れ、そして
「あれはっ、テレビの音なんかじゃねぇよ・・・!帝人のばかっ・・・!」
悲痛な叫びと小さな嗚咽だけが響いていた。
♂♀
パタンと携帯を閉じながらハァ、と長い溜め息をついた。そして普段の彼からは想像することが出来ない表情を浮かべる。
「まったく、何溢してるんですか、臨也さん。」
「っ・・・き、みって本、当に残虐だよね・・・」
掌からダラダラと血を流しながら溢せば、ガッと何かが顔の横に刺さる。
「正臣に怪しまれましたよまったく・・・貴方のせいですよねぇ、これ。」
ニッコリと笑いながら近づいてくる帝人の指には何本ものボールペン。
「どんだけ持ってんの・・・」
恐らく壁に刺さっているのも掌に刺さっているのも同じものなのだろう。
「ボールペンは学生の必需品ですから。」
一切表情を崩さない帝人は一度言葉を切り、臨也の腕を取る。
「さて、次は何処に刺しましょうか?」
それは酷く残酷で、無情な笑みだった。
全ては君の為に
(僕の行動理由の元を辿れば全て正臣に行き着くのです。)(ところで、正臣に酷いことをした貴方にはやっぱりお仕置きですよね?)
三巻を読み返した後に帝人様を書くともれなくこうなります。
帝人様は浮気なんてしません。生まれてからずっと正臣に一途なんです・・・!
100604