幽に誘われてやってきたが、なんとも場違いなものだろうか。静雄は小さくため息をついた。煌びやかな雰囲気のそこは彼にとって居づらい以外の何者でもなかったりする。
ここはとあるパーティー会場。
羽島幽平と聖辺ルリの共演記念パーティーへの招待状を貰ったのだが、自分は破壊人形と名高い平和島静雄。自分が行けば迷惑掛けるかもしれないし、そもそも行きたいとも思わなかったので断るつもりだった。
しかし、幽が忙しい中スケジュールの中、わざわざ
「兄貴が来るの待ってるから。」
と伝えに来たのだ。元来弟が大好きな静雄である。おもわず了承してしまったのだ。
そこまで回想して再びため息を吐いた。
きっと何かあるのだろうとやって来たのだが、来た途端
「普段兄貴大変そうだし、たまにはゆっくり休んでよ。それにこういうの毎回来てくれてなかったしさ。」
などと言われ、シャンパンまで手渡され、帰る道を完全に絶たれてしまったため仕方なく会場に居る。つくづく自分は弟に弱いと思うが、直す気は毛頭無い。
ふと視線を感じて顔をあげると婦人達と目があった。途端顔を赤くして目を逸らした彼女らを不思議に思い首をかしげる。
今日、静雄は珍しくバーテン服を脱いでいる。流石にパーティー会場にまでバーテン服はどうだろうと思った結果、トムにスーツを選んでもらったのだ。
弟を見てわかるように彼は美形だ。さらにサングラスを掛けていないため、切れ長の目が晒されていてなんとも目を引くものがある。
まぁ要するにかっこいいのだ。
しかし本人はまったく気がついていないので何で見てるのだろう程度にしか感じていないのだが。
彼にとって不快でしかないその視線を感じながら辺りを見回し、そしてパッと視線を奪われた。
壁に凭れた少女。
淡いピンクのドレスを着たその少女は茶色の豊かな髪を肩に垂らし、俯いていた。
退屈そうな表情を浮かべている彼女は今踊っている婦人達の誰よりも綺麗で。
ホールボーイにシャンパングラスを渡し、少女に近づいていく。
「おい、」
パッと顔をあげる彼女。
一瞬静雄に目を奪われるも平静を取り戻したらしい。
「なん、ですか・・・」
警戒心丸出しの彼女に怖じ気づくも気を取り持つと口を開く。
「いや、暇そうだなっと思ってよ・・・」
「あ、いや・・・こういうの初めてで・・・」
「まじか。俺もなんだよな」
「本当ですか!?」
パッと目を輝かせると手をギュッと握った。
「みんなお話とかしてるけど何話せば良いかわからなくて・・・!もう俺どうしたら良いか・・・!」
「俺も。お前名前は?」
「紀田正臣、です。男みたいですけど女ですよ?」
ニカッと笑うとドレスの裾を掴み優雅に一礼してみせる。
「ふぅん、まぁこんだけ可愛けりゃ男には見えねえよ。」
「ふふふ、お世辞でもありがたく受けとりますよ?」
いたずらっ子のような笑みを浮かべた。そして何を思ったか徐に静雄の手を引いた。
「お、おい・・・・」
ずんずんとダンス会場の方へと進んでいき、真ん中辺りまで行くとスタリと止まる。
そしてクルリと向かい合う形になると静雄の手を取った。
「ねえ、私と踊りませんか?」
リズムを取るように体が揺れる。
一歩遅れてスカートが舞う。
流れるような動きの二人を見た幽は誰に知られることもなく小さく微笑んだ。
壁際の華
(兄貴の相手探しありがとうございました、臨也さん)(ああ、気にしないでよ。彼女もシズちゃんと仲良くなりたかったみたいだし。)
最近舞踏会系がブームみたいですw
シズちゃんと♀正臣だとこんな感じかな、と思いました。
正臣はシズちゃんが好きで、それを臨也は知ってる。
で、幽にシズちゃんの相手を探してると依頼された臨也が正臣を会場に連れって行った、という裏設定があったりなかったり。
100529