気が付けば叫んでいた。
「母上っ・・・!俺は男です!」
「ええ、知っていますよ?誰が貴方を生んだと思っているの?」
「ならばっ、ならば男同士の結婚など出来ないのに何故っ・・・!」
必死に叫ぶ正臣をフッと鼻で笑うと彼女は酷く歪んだ笑顔を浮かべる。
「あら。正美が居なくなった今、貴方の他に誰が天皇家に嫁ぐの。貴方顔だけは可愛らしいのだからそれを最大限に利用しない手がどこにあるの?」
そう言っていつの間にか部屋に入ってきていた彼女の手が正臣の腕を引きあげる。
「ほら、立ちなさい。貴方は今から女としてのたしなみを覚えなければいけないのだから。」
「嫌ですっ!やめてください・・・!」
全力で拒否する正臣に溜め息を吐く彼女。そして次の言葉によって正臣の思考回路は完全にストップした。
「貴方が帝人様に嫁ぐ事は正美を助ける事になるのですよ?」
「なんでっ・・・・!」
驚いて顔を上げる正臣。彼女はそれを気に留める事無く言葉をこぼす。
「あら、貴方は正美が臨也様に恋をしていた事を知らないのかしら?知っているでしょう?彼女は臨也様と結ばれたい。しかし彼女の婚約者は帝人様と決まっている。どうにもならなくなった正美は何も言わず飛び出したのです。そこで、貴方がもし帝人様と婚姻関係を結べば正美は帝人様との婚約を無かった事に出来ましょう。そして彼女は臨也様とめでたく結ばれる。」
ドキン、と胸が嘶いた気がした。
「ねえ、貴方は正美の事を守りたいのでしょう?幸せを願っているのでしょう?それならば、悪い話ではないと思うのですけれど?」
そんな彼女の言葉に彼は知らず知らずのうちに首を縦に動かしていた。
「いい子ね、正臣・・・・」
優しく頭を撫でる手。
正臣がその手に何かを感じる事は無くて。
心のどこかで何かが壊れる音がした。
100523
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