泣き疲れた体に鞭をうち、ふらふらとしながらも立ち上がる。
「正美・・・・」
よたよたと壁を伝いながら近いようで遠い正美の部屋へと向かう。その間何故か女中や両親には会わなかった。
ガタ、と襖を開けると綺麗に整頓された部屋の中に未だ敷かれたままの布団が一組。
「珍しいな、敷きっぱなし・・・・」
すっ、と中に入ると心落ち着く正美の匂い。ゆっくりと歩み寄れば皺一つないシーツと枕、それと捲れた掛け布団。
「やっぱ、居ないか・・・・」
はぁ、と溜め息をつくともう一度布団を眺める。もしかしたら、という微かな希望すらも打ち消され思いっきり項垂れる。
それでも期待を捨てきれずにもう一度だけ、と眺めると枕の下に何かを見つけた。
「紙・・・?何とベタな・・・・」
カサリ、と拾い上げれば見慣れたその文字が溢れる。
丁寧に持ち上げて黙読。
静かな空気が流れる。
そして、
「ベタすぎる、だろっ・・・!」
両手に紙を持ったままガクン、とその場に崩れ落ちた。両手がプルプルと震えている。
「おま、探さないでくださいって・・・・」
顔を歪める。グっと噛み締められた歯と変な笑顔がミスマッチで。
「笑えないって・・・」
紙を思いっきり握りしめた。
そんな時ガラリと開く無情な襖。ぱっと振り返ればそこには母親。
「正臣、ちょっとおいでなさい。」
ニッコリと笑う彼女にいやな汗が伝った。
「な、何でしょう・・・?」
おそるおそる返事をすれば、さらに素敵な笑顔を浮かべた彼女。
そして正臣めがけて超巨大爆弾を落とすのだった。
「帝人様の元へは貴方が嫁ぐ事になりましたよ。」
100523
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