*若干三巻のネタバレ含みます
そこには雨降り注いでいた。
少年の服は既に元の色が分からない程濡れており、染めた髪からはひっきりなしに滴がこぼれていた。
しかし少年はそれらを特に気にすることもなく―――実際には気にすることが出来なかった。
ふらつく足を叱咤しながら一歩一歩踏み出す。
「早く臨也さんの所へ………」
少年は呟きながら尚も歩き続ける。
不意に雨が止んだ。
正確には、雨の感触が無くなった。
誰かが傘に入れてくれたらしい。その証拠に雨の音は未だに激しく鳴り響いている。
少年が顔を上げるが、視界がボヤけて見えない。
「やぁ。どうしたんだい、そんなに濡れて。」
少年の目に涙が浮かぶ。
「い……ざやさ………」
震えながらも確かめるようにポツリと呟く少年。
臨也と呼ばれたその男は、静かに少年を抱き寄せた。
「こんなに濡れたら風邪を引くよ。」
嫌な笑みを浮かべた男が囁く。
少年は男の匂いに安心したのか肩を震わせ始める。
「寒い、です………臨也さん」
いつの間にか地面に膝を付いて抱きつく少年を男は静かに見下ろした。
「俺の大事な駒、泣かした奴はどうしてやろうか」
少年に聞こえないくらいの声で呟いて、顔を歪ませる。
歪な微笑みを携えて、彼は少年に声をかけた。
「さぁ、行こうか。正臣くん」
「はい、」
それは恋とは言い難く
(とりあえずこの駒を壊した奴は静ちゃんに殺してもらおう。)(この子は俺だけのものなのだから。)
100322