「正臣くんってさ、なんだかんだ言いながら俺のこと好きなんじゃないかって思うんだよね。」
ブフゥウ!
勢い良く飲んでいた牛乳を吹き出す。
「あーあ、もう。正臣くん汚いよ。」
この家の持ち主はケラケラと笑いながらそれをとがめるが拭こうとはしない。気にしていないのだろう。
「・・・・は?」
何言ってんだこいつ、ついに頭が・・・・?とでも言いたそうな正臣の顔すら気にせず、飲み終わったらしいコーヒーカップをクルクル回しながら臨也は続ける。
「だってさあ、普通嫌いだったら俺が呼び出しても来ないよね、家まで。それに夜を一緒に過ごす、なんてしないでしょ?」
ニヤニヤと笑いながら夜の君は本当に素直で可愛いからね、などと平気で言う臨也の顔を思わず殴りたくなるが、一生懸命にその衝動を抑える。
こういうときに自分は成長した、と実感する正臣である。
「あなたに逆らったら怖いですからね。いつ自分の情報流されるか分かったもんじゃないので。」
極力感情を込めずにそれだけ言う。
「ははは、まさか!君の情報なんてほしがる奴いないよ・・・・おぉ怖い怖い!そんなに睨まないでよ。・・・・あぁ、君の幼馴染みは欲しがっているようだけれどねぇ?」
睨みつけていた正臣の表情が帝人、という単語だけで明るくなる。
「帝人が・・・?」
「うん。まあ、あげてないけど。たとえどれだけ金を積まれてもあげる気にはならないしねぇ。」
その言葉に意味が分からない、と首をひねる正臣。
コト、とカップを机において近づいてきた臨也はそのまま正臣の髪の毛をするりとなでて、
「君のことは俺だけが知ってれば良い。だから例え君の幼馴染みだろうと、沙樹ちゃんだろうと関係ない。誰にもあげないよ。」
そう言って正臣の身体を抱き寄せる。
その身体は熱く火照っていて、きっと顔も真っ赤なんだろうな、なんて思う臨也。
「さて、少し話を変えようか正臣くん。その格好、誘っているようにしか見えないんだけどさあ、襲っちゃって良いのかな?」
バッ、と正臣から離れたかと思えば上からしたまで舐めるように眺める。
そう言われて正臣は思い出す。自分が今身にまとっている物を
「ーーー〜っ!!こ、れは、近くに着れる物が無くてそれでっ!」
「まあ良いんだけどね。たとえ君が俺のお気に入りのカットソーを着ていても、下に何も履いてなくて美味しそうな太ももが覗いていても俺には有益でしかない。」
「ひあっ!」
スッ、と太ももを下から上へとなぞる指に弄ばれる正臣。
「ただし、君にとって有益かどうかは知らないよ?有益だろうが無益だろうが俺の知ったことではない。だってこれからの行われる行為は君の心次第で簡単に変わってしまうのだからね。」
「さあ、ここで質問です。」
「これから行われる行為、正臣くんにとって有益なのか無益なのか。」
「制限時間はそうだな・・・10秒。」
意地悪そうに微笑む臨也と頬を染めながら俯く正臣。
「10、9、8、」
顔を上げた正臣の瞳は暫く宙を彷徨って、でも臨也を確かに定めると口を開く。
「俺は快楽に従順です。」
「そして臨也さんとの行為は確かに気持ちいい。」
「だから、俺にとっても有益です。」
臨也は暫くポカンとしていた。そんな珍しい表情に思わず笑ってしまった正臣の笑い声で己を取り戻すと苦笑した。
「まったく、もっと甘い言葉を期待してたんだけど。」
「俺とあんたの間にそんな物必要ないでしょう?」
「ははは、上等。」
「思いっきり乱れさせてあげるよ、紀田正臣。」
「受けて立ちます。」
二人連れ立ってベッドルームへ入る。
(だけど思ったんだ。)
(俺との行為が気持ちいいと感じるってことは)
(やっぱり俺のことが好きなんじゃないかってね。)
しかし臨也の心の声は正臣に届けられることは無かった。
(だって、君は恥ずかしがりやだもんね?)
答えなんて返ってこないと分かっていたから。
ふふふ、と笑うと正臣は怪訝そうな顔で臨也を眺める。
「俺とやってるときに他のこと考えないでください。」
「嫉妬かい?」
「違います、不愉快なだけです。」
「人はそれを嫉妬と呼ぶんだよ?まあ、安心しなよ、君のことだから。どうやって乱れさせようかなって。」
「っ!この変態!!」
「お褒めに預かり光栄でございます、お姫様?」
結局は
(貴方の事が好き。)(そういう事なんです。)
たまには強気な正臣は如何ですか?という事でした!
臨正書きやすいのは私だけでしょうか?臨也がかってに走ってくれるので←
100425