それはまるで鳥籠のような
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※色々ごめんなさい



ギギーッとドアが音をたてながら開く。

(あ、帰ってきた?)

コツ、コツ、と一歩ずつ近づいてくるその足音は迷うことなく近づいてきているのがわかる。


カチャ、

先程よりも軽い音がして、部屋のドアが開けられ、


「ただいま、」

背後からはあの人の声。

「おかえりなさい。」

足音はいまだ止まらずこちらに近づいてきているように聞こえる。

真後ろでピタリと止まったそれ。
代わりにフワリと覆い被さってくる体。

「良い子にしてたかい?俺の可愛いカナリア。」

そう、カナリア。俺はカナリア。
正確な名前もあったけど忘れた。
だって、ご主人様は要らないと言ったから。

「はい、ご主人様。俺はずっとこうしてました」

「そう。カナリアは良い子だね。」

そう言って頭を撫でてくださるご主人様。

俺が今いる部屋には窓がひとつとベッドがひとつ。あとはトイレとエサ箱があったと思う。

窓からは雨の音が聞こえてくるだけ。今のところ、人の声や車の音が聞こえたことはない。

完全に外の世界から隔離された空間。
視覚など必要ない、とご主人様がおっしゃった。それからはずっとアイマスクを着けている。だから今が何時か、昼なのか夜なのか、そもそも俺がここに入ってから何年経ったのかもわからない。


「それにしてもカナリアの肌は綺麗だよね。真っ白で・・・いや、透明に近いかな。本当に綺麗だよ。それに比べて他の女の肌は見てられないね。あぁもう、ずっとカナリアと二人で生きていきたいよ。二人だけ、二人だけの世界を創ろう。他の人間なんて要らない。」

ご主人様は毎回このような夢物語を語る。でも永遠に叶わないことは知っているから。
ご主人様にはたくさんの人が必要だ。でも、俺はご主人様だけで良い。ご主人様しか必要ない。だって俺の回りにはいつも人がいなかったから。

(・い・・・・、ま・・・!!・・・ぼ・・・・・て・・・)

突如頭に鳴り響く男の声

なぜだか酷く懐かしい。


本当に誰も、



いなか・・・・・った?



「ねえカナリア?」


殺気。

背後から立ち上る殺気。


「ご、主人様・・・?」

「ねえ、何を考えてたんだい?」


どうしよう、怒らせてしまった。


「あ、の、今日は鳥が鳴いてないなぁ、と・・・」

「ふぅん、そう。でも、俺と一緒に居ながら俺以外の事を考えてる、なんて感心しないね」

きっと真っ黒な笑みを浮かべているであろう臨也さん。

(あれ、臨也さんって・・・だ・・れ・・・?)

「そっかぁ、またかぁ・・・まったく懲りないねぇ、君も。」


そういって、ごしゅじんさまはアイマスクをおとりになって



「全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部忘れなよ正臣くん?」


刹那蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る蘇る


(思い出してよ正臣!!君には僕がいるってことを)


思い出した、俺は、帝人は、この人は・・・!!


「臨也さんもう止めてください!こんなことっ・・・!」



「合言葉は、」



「やめろっ!!」



「紀田正臣。」


「あああああああああああああああ!!!」



くたりと横になる白い体。
カナリアと呼ばれるその男。
意識は無いのに目からは一筋の涙。


そして、歪んだ笑みを浮かべる青年。


「俺は人間が好きだ!だけど紀田正臣、お前は別なんだよカナリア。」

しかしその後、唐突に表情を変える。

「愛してる、愛してるんだ紀田正臣。俺は君しか必要としない。」

「だから、君が俺だけを必要とするまでここに居てくれないかな、」


「俺だけの、カナリア・・・」





それはまるで鳥籠のような

(本当に囚われてるのはきっと)(君じゃなくて俺なんだ)




正臣に依存する臨也。
正臣が好きすぎて、でもそれは一方通行で。だから記憶を弄って全てを忘れさせて。カナリア、っていう名前の時は自分しか見てない正臣が嬉しいのに何か物足りなくて。でもそれがわからなくて。
で、正臣が思い出しそうになったらすぐに記憶を消す。記憶抹消コードは紀田正臣。ただし目を見ながら言わないと消えない。
これは正臣を閉じ込めた自分への戒めでもある、っていう裏設定があったり・・・


って長々と説明しなきゃいけない小説書くなよ自分・・・orz


切ない臨正を久々に書いてみたかったんだ!
そして物凄くエンジョイして書いてました。
ご主人様・・・!!←


100422




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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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