You're My Princess !
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池袋某交差点、急ぎの用があったいたいけな少年が絡まれた事から始まった。



ドンっ

「あ、悪い!」
「おいおいおい兄ちゃん、それはねーんじゃねえの?」
「人様にぶつかったくせに悪いだけは良くないよねぇ?」
「これはちょっとオベンキョウしないとなぁ?」


無勢に多勢。ズリズリと路地裏に引きずり込まれる少年。

「ちょ、離せよ!」
「ギャハハハハハハ!離せよだってよ!これだからガキは何も分かってなくてウゼェよなぁ」
「いっ・・・」

リーダー各のチンピラは少年―――その名を紀田正臣という―――をドサッと地面に叩きつける。

そして自分も同じ高さになるようにしゃがんで顔を覗き込んだ・・・瞬間態度が変わった。

「おい見ろよこいつ!」
「あぁ?・・・うわ、キレーな顔」
「やべ、これなら俺いけるわ」

「は、え、何が・・・・?」

正臣は理解できないと困惑している。が、チンピラはその顔を見てニヤニヤと笑いながら言い放った。

「だぁかぁらぁ・・・・君を犯してあげるって言ってんだっつーの!」

数秒後、言葉の意味を理解したらしい正臣はみるみる血の気が失せていく。

そうしている間にもチンピラの指は正臣の服を脱がせようとしている。

「かぁわいいねぇ?ほーんと、食べちゃいたくなるよなぁ?」
「まじ旨そぉだなぁ?」

肌に触れた指が気持ち悪い、と眉をひそめる正臣。

「ひ、やめ・・・」
「ギャハハ!こりゃアタリみたいだぜ?」
「確かに、そこらへんの女よりよっぽど良いなぁ!」

「まじ、ヤメ・・・誰かッ・・・助け・・・・・・!!」

「無理だって!!誰も来ねーよ!」


「おい。」


不意に上から降ってきた声に周囲のチンピラは肩を跳ねさせる。
そんな中、正臣だけが安堵と疑問を含んだ顔で声の主を見上げた。

「静雄・・・さん?」
「おう、悪いな、助けにくるの遅れちまって。」

それだけ言うとチンピラの方を向き直り、

「おいお前ら。俺の物に手を出すとは・・・良い度胸じゃねぇか。




死ぬ覚悟、出来てんだろうなぁあああああ!!!!」


それから一瞬のうちにチンピラの姿は見えなくなった。
何故か?答えは簡単。

額に青筋を浮かべた静雄の繰り出した拳が当たる度、チンピラが宙を舞ったから。

よって静雄が三度拳を打ち込むだけで終わってしまったのだ。


ふぅ、と息を吐き出した静雄はクルリと正臣に向き直ると先ほどまでの殺伐とした雰囲気は消え失せており、ただただ柔らかい笑みを浮かべていた。

「大丈夫だったか?」
「は、い・・・あの、俺・・・」

先ほどの怖さが戻ってきたのだろう。がたがたと震え始めた正臣の身体。
静雄はゆっくりと近寄るとギュッ、と抱きしめた。

「もう、大丈夫だから、な?」
「うぅ・・・・っく・・・・」
「よしよし、怖かったな。」

抱きしめられた事により安心したのか涙を流し始める正臣の頭を優しくなでる。

「こわかっ・・・・うっ・・・ごめ、なさ・・・」
「おいおい、謝るなよ。お前は別に悪い事してねぇだろ?」
「だ・・・って、・・・迷、惑・・ヒクッ・かけてるし・・・うぅっ・・・服、汚しちゃって・・・・大切な・・・物なのにっ・・・・うくっ・・・」

つまりながら謝罪してくる正臣。まぁ確かにこの服は幽に貰った物で大切だ、大切だけれども、と静雄は口を開いた。

「馬鹿だな、本当に。服なんかよりお前の方が大切に決まってんだろ?服がどんなに汚れようとお前を助けられたら俺はそれで良いんだよ。だから、」

一度言葉を止めて顔を覗き込む。
そして、正臣の泣きはらした目を見つめて続けた。

「俺にもたまには甘えろよ。」

その言葉に止まりかけていた涙が再び溢れ出した。






暫くして完全に泣き止んだ正臣はゆっくりと顔を上げた。

「すいません、いっぱい濡らしちゃいましたね。」

その言葉に自分の胸元を確認した静雄はクシャリ、と正臣の頭に手をのせた。

「別に構わねぇよ。お前のだしな。」

そう言って立ち上がると正臣の手を引っ張り立ち上がらせる。そしてそのまま抱き上げた。

「っ!?何してんすか!?」
「だってお前泣きつかれてんだろ?運んでやろうと思って。」
「そんな、良いです歩けます下ろしてください!」

そう言ってバタバタと暴れる正臣を抱えたまま歩き始めた静雄。

「ほんと、だめですって!俺、重いっ!」
「かりーって。それに、」

ふふ、と笑って正臣をきつく抱き寄せる。

「助けを求めたお姫様を最後まで守るのが騎士の役目、ってな」



その数分後、真っ赤な顔をした正臣と正臣を抱き上げたまま平然と歩く平和島静雄の姿が多くの人間に確認される事になる。

そして翌日には平和島静雄には恋人が居るが、その恋人には決して手を出してはいけない、という新たな池袋ルールが生み出されていた。


You're My Princess !

(・・・・不意打ちはズルいです)(?何の事だ?)



最後を言わせたかっただけです。
初めてカッコイイ(?)シズちゃん書いたかも。
正臣はこんなに弱くないんですけどね・・・あれだ、腕とか縛られてたんだよ←



100416



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