Midnight
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春の訪れにより日中は勿論夜も暖かくなってきたのに今日に限ってなかなか寝付けなかった。


もうベッドに入って二時間は経とうとしているだろう。明日のことを考えるとそろそろ寝た方が良い。そう思い寝る体勢を整え、目を瞑る。

そうしてやっと少しうとうとし始めた時、それは起こった。



トゥルルルルルル・・・・



一本の電話。今なら寝れそうだったのに、と少しイラつきながら時計を見ればもうすぐ日付の変わる時間。

(こんな時間に電話・・・?)

もしかしたら大切な連絡かもしれない。そう思い手元に置かれていた携帯を慌てて開けて相手を確認する。


「え・・・遊馬崎さん・・・?」

迷わず通話ボタンを押せばスピーカーからは夜中に似合わない賑やかな音。


―――あーもしもしー。竜ヶ峰くんっすかー?

それと共に聞こえたのはアルコールを含んだ男の甘い声。

「あぁ、はい。そうですけど、こんな夜中にどうしました?」

普段そんなに関わりを持っていない人からの電話。しかも真夜中。何かあったに決まってる。

―――実はっすねー・・・・はい。

一瞬途切れる声。直後流れ出したのは


―――ふぇっ・・・みかどぉっ・・・


他ならない正臣の声だった。

「え、ど、どうしたの!?」

いきなりの恋人登場で驚く。しかも涙声。心配せずにはいられないのだろう。

―――・・・ぐすっ・・・今すぐ来て・・・



そして、助けを呼ぶ声が聞こえた瞬間に僕は夜の道を駆けていた。




走り出してからしばらくしてから店の場所を知らないことに気がつき遊馬崎さんに聞けば近くの居酒屋に居るという。何だか嫌な予感がして、足を早めた。



ガラッ
「「「いらっしゃい!」」」
店員が全員で挨拶してきたが無視する。そしてズンズンと個室へと近付く。




スパーンッ

ふすまを開けるとそこには

「あぁー、竜ヶ峰君だぁ」
「早かったっすね」

オタクコンビが僕を待ち受けていた。
正臣は、と探すと何故か門田さんの膝の上に居た。

「あの、これは・・・?」

床には大量の空のアルミ缶が転がっており、足の踏み場が無い状態で。

「あー、と。悪いな竜ヶ峰。俺が少し席を外してるうちにこんな事になっててな・・・」

申し訳なさそうに謝る門田さん。
そして、僕の存在に気が付いたらしい正臣は泣き顔をふにゃりと笑顔に変えて駆け寄ってきた。

とてとてとて、ぎゅっ

「みぃかぁどぉっ・・・しゅきぃー」

「!?!?」

「帝正帝キター!!」
「あ、本当にデキてたんすねー」

普段の正臣からは考えられないようなしゃべり方に驚く。横でカシャカシャとカメラのシャッター音がするが気にしていられない。

「あうぅ〜〜〜」

なぜなら正臣の可愛さが異常だから。グリグリと頭を擦り付けてくる正臣。可愛い。可愛すぎて思考回路が大混乱を起こしている。

が、正臣の身体から香るアルコール臭に急に脳が正常に働き始めた。

「もしかして・・・飲んだ?」
「・・・・ふぇ?なにをぉ?」

飲んだな。そう確信する。大方、勧められて断りきれなかったのだろう。そして勧めて来た人というのはきっと・・・

「狩沢さん・・・」
「あははははー、ごめんねー。まぁいいじゃん。可愛い紀田くん見れたんだしー」

ねー、と二人で顔を合わせている二人に溜め息をつく。
確かに可愛い。犯罪級に可愛い・・・でも、

「こういう可愛い正臣は僕だけが知っていればいいんです。」

そして抱きついてきていた正臣をおんぶする。それじゃ、と軽く会釈して居酒屋を出た。
後ろから「まさかの帝正!?美味しすぎるよー!」と叫んでいるがまたしても気にしない事にした。



背中に感じる重みと暖かみに顔が緩むのは許していただきたい。なんだかとても幸せな気分なのだから。

ところで何故こんな時間にあの人達と居酒屋に居たのだろう・・・

まぁ、いいか

その問いかけにはものの2秒で答えを出した。
だって、そんな事を聞くよりも後ろから聞こえる鼻歌を聞いている方がよっぽど良いと思ったから。

時折吹く冷たい風が頬をなでる。
それが妙に気持ちよくて僕まで鼻歌を歌ってしまいそうだった。



暫く歩いたとき、不意に後ろから聞こえていた正臣の鼻歌が止んだ。

「あ・・・・の・・・・帝人・・・?」
「どうしたの?正臣」
「ううぅ・・・あぅぁ・・・ちょっと・・・恥ずかしいなって・・・」

そう言って小さく抵抗し始めた正臣。ひょっとして・・・・

「あ、酔いが醒めたの?」
「ううぁぅぁ・・・・・・」

こくん、と首を振る動作が肩にあたって返事を知る。可愛い。僕はふふ、と笑って手に力を入れた。

「で・・・下ろして欲しいなー、なんて・・・」
「嫌。」
「嫌って!・・・本当に恥ずかしいんだぞっ・・・・」
「もう夜中なんだから人も少ないし大丈夫でしょ?それに、」

一度言葉を切って正臣を振り返る。

「僕だけの正臣って、みんなに自慢できるから下ろさない」

瞬間ボッ、と赤くなった正臣を視界に入れながら僕の家へ向かった。



midnight

(返事がないってことは)(同意、って思って良いんだよね?)


このあと正臣は帝人に食べられます←
それにしても帝人は正臣のことを可愛いと思い過ぎですねw

実はこれ一回データ吹っ飛んだんで急遽書き直しました。
なので文法おかしかったらすいません。誤字など見つけましたらまたご報告お願いしますorz

100414



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テーマ「人外ファンタジー」
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