※時間軸は6巻後(3巻ネタバレ注意
※帝人は器用そうだからきっと絵も上手いだろうという妄想の末の産物
右手に持ったボールペンをクルリと回す。シュッと宙を切ったそれは光を浴びて妖しく反射する。
そのペン先の金具部分には赤黒い汚れがこびりついていたが少年は特に気にしている様子はなかった。
少年がペンを見つめる。上に掲げニヤリと笑う。
鞄から一枚の紙をグシャリと掴むとペンを走らせる。
シャッ・・・ガリガリシャシャシャ・・・
ほんの数分間、そこにはペンが奏でる不協和音が響いた。
ガリッ
一番大きな音と共に止まったその音。
「ふふ・・・上出来かな。初めてにしては、ね。」
少年は満足そうに呟いてガタリ、と席を立つ。
「 」
少年の机の上には所々赤が混じった黒で描かれた酷く歪んだ美しい絵が取り残されていた。
A Likeness
(愛してるんだよ)(こんなに鮮明に思い出せるくらいに)
題名は似顔絵という意味です。
きっと帝人は細部まで描き込めるぐらい正臣の事を覚えてるんじゃないかという妄想から。
100412