バイバイ、いつも通り
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鐘の音と共にざわつく教室。生徒たちは口々に別れの挨拶を交わす。そしてすぐに教室が空になってしまう。これが”いつも通り”。
たまに仲のいい奴らが俺に声をかけてくる。
「今日さぁ、カラオケ行こうぜ!」
「それよりゲーセンだろ」
「良いなそれ。じゃあゲーセン行こ!」
それらを断るのも”いつも通り”。
「わりーな、先客が居るんだよ。まぁ俺みたいな良い男、女の子がほっといてくれないってゆーか?」
「とかいって、今日も竜ヶ峰と帰んだろ?」
「杏里ちゃんもな。」
「お前らほんと仲良いよな〜」
「そういうこと。今度は行くからさ」
とか言って、行った事ないけど。
「ははは!楽しみにしてるよ。じゃあな、紀田!」
彼らも出て行った。
教室にはもう俺しか居ない。

「ごめんね、遅くなって。帰ろっか」
暫くして帝人がやってきた。これも”いつも通り”?。
「気にすんなって。・・・って、あれ?杏里は?」
きょろきょろ辺りを見渡すがどうみても杏里の姿は見えない。
「あぁ、園原さんはなんか用事があるみたいだよ。先に帰っちゃった」
杏里は用事があって先に帰る事があるのなら帝人だけじゃなく俺にも言う子なのに。おかしいな、いつも通りが崩れている。
「そっか。」
そう言って俺は席から立ち上がった。

二人で帰るのは何日ぶりだろうか。帝人と他愛もない話を続ける。何だか良くわからないがこのひとときが俺は結構好きだったりする。
帝人と二人の時間は三人で一緒に居る時よりも早く過ぎるから不思議だ。

「ーーーってことがあってさぁ」
「あはは、ほんとに正臣って変な事してるよね。」

そしてもっと不思議なのは帝人が笑った時の胸の高鳴り。さっきからドキドキが止まらない。なんだよこれ、止まれよ、止まってくれ、頼むから。まともに帝人の顔が見れない。ドキドキしすぎて顔が熱い。
急に下を向いた俺を心配してるのだろう。遠くで帝人の優しい声が聞こえる。どうしたの急に、どこか痛いの?だなんて。
「大丈夫、ちょっと小指ぶつけちゃって」
「本当?まったく、どうやったら歩きながら小指ぶつけられるんだよ」
また笑った。ほんとに何だよこれ。今日の俺おかしいのかな。胸がドキドキして、帝人の笑顔で胸が痛くなるなんて、まるで・・・・


まるで、恋してるみたいだ。

俺が、帝人に?ないないない!俺は女の子が好きで、ナンパが好きで!いや、でもやっぱり帝人のほうが・・・・・

そっか。俺帝人の事好きだったんだ。だからいつも友達に遊びに誘われても断ってたし、告白してきてくれた女の子も振っちゃってたのか。

気づいたらもう最後。俺今人生で一番ドキドキしてる。もしかしたら、”いつも通り”に終わりがきたんじゃないかって。なぁ帝人。俺いつも通りはもう飽きちゃったんだ。

「じゃあね、また明日。」
いつのまにか、あの交差点。帝人とバイバイする、場所。

だけど今日は違う。俺がバイバイするのは・・・・

前を歩く帝人の背中まであと・・・・・


バイバイ、いつも通り

(うわ!どうしたの正臣)(みーかど、俺お前のことが)



と言うわけで純情帝正でした!
帝→←正です。ちなみに帝人は杏里に頼んで先に帰ってもらってるという裏設定が・・・(ごにょごにょ)
正臣は無意識のうちに帝人が好きになっていましたよ、っていう話です。

100402



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