残念ながらべた惚れ
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※振り回す正臣と振り回される帝人


「よし!次行くぞ、次!」
僕の右手を強く引っ張って歩き始める正臣。
「ちょっと待ってよ正臣!」
正臣の右手には物凄い量の買物袋が下げられている。勿論僕の左手にも。しかしその中に僕のものは一つもない。今日は正臣の買い物に付き合うという約束だからだ。

「んーと、次はどこに行こうかなぁ……」
正臣は僕が追い付いてもそれに気付かず考え事を続けている。せっかく二人で居るのだからもう少し僕を気にかけてくれても良いと思うんだけど。
なんだかモヤモヤして先程から握られているだけだった右手を自分から握って引き止めてみた。
すると、さっきまで前を向いていた正臣がやっと僕の方を向いてくれた。
「どうしたんだ?帝人」
「正臣はさぁ……せっかく一緒に居るんだからもうちょっと僕と話したって良いんじゃない?」
下を向きながら言い放ち、チラリと正臣を盗み見ると驚いたかのように目を見開いていた。
そしてプッと吹き出すと
「何だよ帝人ぉ!買い物に嫉妬すんなよ」
このこの、と腕を押し付けられる。
「だってさぁ……」
反論しようとすると正臣の指が唇に触れた。
「俺がこうやってマイペースに買い物できる相手は帝人だけなんだぜ?」
他の奴とだと気使っちゃうだろ?そう言いながら綺麗に笑った。
思わずドキッとした自分が素直すぎて嫌になる。

「よし、じゃあ次いこう!」
ふふん、と笑うと手を離し駆け出した正臣。
先程までの甘い空気は何処にいったのだろうか。まったく、自分勝手なものだ。

でも、
「ほら早く!」
少し遠い所でこっちを見ながら手を降る正臣に何でもいいやと思ってしまう僕も重症なのかもしれない。
「ちょっと待ってよ!」
僕も正臣に追い付くべく地面を蹴った。



残念ながらべた惚れ


(特別っていう事実が)(何よりも嬉しいんだ)



ということで、久しぶりに黒くない帝人でした!
黒くない帝正は正臣が帝人を振り回してると可愛いよね、って言いたいだけです。
最近長編ばっかり書いてたんでちょっと新鮮ですね、短編。


100402



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