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隣に温もりを感じながら身体を起こせばいつもよりは随分早い時間を時計が差していて安心する。
予定通り起きることが出来たのだと、ベッドから這い出ながら喜んだ。
腕を伸ばすと背筋が伸びて気持ちがいい。
それから小さな欠伸を零すと、昨夜の疲れが残っているのか、はたまた起床時間には程遠いからかすぅすぅと寝息をたてている彼を見やった。
その額にかかる金髪を持ち上げて触れるか触れないかの口付けを落とすと細心の注意を払いながら寝室を出たのだ。
まだうっすらとしか明るくない室内を電気を点けずに歩く。
そしてどうにか一階に降りると、台所の電気だけをパチンとつけた。
煌々と輝き出したシンクは、いつもねように彼が洗ってくれたのだろう。
水垢一つ付いてないそこを汚すのは気が引けたが、臨也の決心は鈍らなかった。
冷蔵庫を開け必要な食品を次々引っ張り出す。
卵、ベーコン、パン、バター、それからグレープフルーツ。
助手が居なかったころはこれでも自炊していたのだ。
最近ではその助手でもなくなって、可愛らしいもと高校生の手料理だけど。
そう心で一人誰に聞かせるでもないノロケを吐き出しながらフライパンを引っ張り出した。
やがてジュージューと小気味良い音が響き出すと、臨也は顔を歪ませて笑う。
今日は、誕生日だから。
一年に一度くらい、彼を解放してやったって良いかもしれない。
今日だけは、大人しくしていてやろうじゃないか。
身体は繋がれども心は誰よりも遠い場所にいる彼を思い起こす。
それから一人苦々しく溜め息をつくと、近くにあったメモ帳にさらさらとペンを滑らせ火元を確認し、そのまま音もなく家を出たのであった。




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