「問答」
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結婚の契り。
そんなものは初めて聞いた、と正臣は首を傾げる。何故女中や両親は自分にその事を教えなかったのか、いや、教えられなかったのか。という事はソレを知れば自分が皇子と会うことをを拒んでしまうような事なのだろうか。
いくら考えても分からない。母屋に向かう足を止める事無く考えていればふと先ほどの皇子の表情を思い出した。

(少し照れた素振りをなさっていた気がする。それから、あの、笑顔・・・。どこかがっかりしたような、悲しそうな笑顔だったような・・・)

途端つきん、と痛む胸。彼にあんな表情をさせたくはなかったと思う。そして自分の無知を恨んだ。

(俺がもっとちゃんと勉強していれば、あんな顔させなくて済んだかもしれない)

それからあれこれ自分をひたすらに罵る。思いつく限罵って、そろそろネタがつきようとしたとき、丁度向かいから歩いてきた女中。幸いにも彼女に急いでいるような姿勢は見えず、これは本当にちょうどいいと声を掛けた。

「今、大丈夫?」

「え、あ、正臣様でしたか・・・どうなさいました?」

声をかけられた事に驚いたのか少しどもりながらも話を聞いてもらえそうなその雰囲気に安心したように正臣は口を開いた。



「その、結婚の契りって言うのはどんな物なんだ・・・?」


その純粋な疑問に女中は思いっきり頬を染めることとなった。









100920


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