あなたは、いったいだあれ?Ver殺伐
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ここは何処なのだろうか。
あまりに濃い霧のような靄が目の前に広がっていて、何も見えやしない。
その空間には臭いも光も無く、ただただ水が滴る音が聞こえるだけだった。


あまりにも暗くて、何も見えなくて、思わず瞳を閉じる。
すると何故か意識だけがすうっと抜けて遠くの方で誰かがあざ笑っている声を聞いた気がした。
酷いノイズ音が耳の中で鳴り響く。この空間にはただ定期的に滴る水滴の音しかないはずなのに、耳の中だけが酷くうるさくて何の助けにもならないとわかっていても条件反射で耳を塞げばそのノイズ音は少し鮮度を持ち、微かにだが声を聞き取れるようになる。


―――いく・・・・・ばけ・・・・・・・・も、こ・・・はこわれ・・・・だねぇ


何を言っているのかは分からなかった・・・いや、分かろうとしなかっただけかもしれない。ただ、聞き覚えのあるその声を長く聞いている気にもなれなくてそっと耳を塞ぐのを止めた。
そのために少し大きくなった水音。と、同時に喉が焼けるように痛んだ。水が欲しくて欲しくて仕方が無くなってここに来てから初めて立ち上がれば頭をぶつけなかったことからそこは意外と天井が高いことが分かる。身を屈める必要性を感じなかったため背を伸ばしたまま水の音の方へと足を進めた。

と、チリッと目の端を擦った何か。瞳を閉じているのだから何かが見えるはずなど無いのに確かに脳裏に映し出されたのは人影に似たそれ。
試しに瞳を開いてみても、以前と濃い靄は消えておらず、ただただ黒い空間が広がっているだけ。
それならばと再度瞳を閉じた。

今は何も見たくない、と思いながらただただ水へとかける。

その足音は酷くそこへと響き、眠りを覚まさせるのには十分で。



「だあれ?ねえ、だれが来てくれたの?」

人ならざるモノはネコのような瞳を揺らして一人呟いた。







あなたは、いったいだあれ?








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