刃物愛
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池袋の入り組んだ路地裏で、一人の少年が何かに襲われている。

『愛してる』

「いやだ・・・」

『愛してるの』

それはまるで何かにとりつかれたかのように愛を繰り返し唱えその度に少年は細い肩を震わせた。

『愛してる。』

「やめてっ、」

『もう、貴方以外考えられない・・・』

「離れろぉっ!」

にじり、にじり、と近寄って聞いては何かを近づけ、その度に少年の喉は鳴らざるを得ない。そんな少年を他所に目を赤く染めたその何か―――男性と思われたそれは女性的な言葉遣いで愛を語る。

『だから・・・愛させて?貴方をいっぱいいっぱい私で満たしたいの。ああ、もう、恐れなくても良いのよ。ただ、貴方を愛するだけだもの。』

「ひっ、」

くい、と差し出されたのは包丁。首元に近づいてきたそれは少年の神経を確実に追いつめていた。

『おねがい、私、貴方の身体が欲しいの。』

そう言って無造作に差し出されたそれをギリギリの所で避ければ服が破れ、白い肌が露見する。

「もう、本当何したいんだよ・・・!」

『私はただ、貴方を愛したいだけなの、ねえ、ほんの少し触れ合うだけで愛し合えるって素敵なことでしょう?』

はだけた服を気にすることもなく、少年は逃げ道を探す。しかし、くまなく探しても男に隙などあるはずもなくて。

『ねえ、紀田正臣さん。母さんがね、紀田正臣さんの事を愛したいって思ってるのが伝わってくるの。母さんの願いは私たちの願いでもあるのよ。』

『だから、私が代表で貴方を愛してあげるの。』

その場には小さな血痕だけが残された。












刃物愛

(刃物に愛されてしまった哀れな少年は)(ただ一人で何を思う)





なにこれ短いw
10分クオリティなので見逃してやって下さいorz



100731



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