両手に花とはこのことだろうか。
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※微弱ですが臨静表現あります。臨静苦手な方はご遠慮ください。






「静雄さんっ!」

むぎゅうと抱きついたのは金に近い茶髪の少年。抱きつかれた男は一瞬事態を理解できていなかったが、少年の姿を確認してその細い身体に腕を回した。

「なんだ、紀田か。」

「なんだって何ですか!」

表情を緩めながら発された言葉が耳に入った途端頬を膨らます正臣を抱き上げて目線を合わせる。その体勢は世間で言われるお姫様抱っこ、というものだ。

「わわっ、落ちる落ちる!」

グイ、と尋常ではない力で持ち上げられたため落ちかけ、慌てふためいた正臣はギュウっと静雄の首に腕を回してバランスを取る。

「落とさねぇっての。俺を誰だと思ってるんだよ。」

ちゅ、と額に唇を当てながら発せられた言葉に少しドキッとした。まるで離すわけ無いだろうと遠まわしにプロポーズされているみたいでボッと顔が赤くなる。が、しかし、それとこれとは話が別である。

「いやでも、万が一落ちたら俺多分死にますよ?」

「いや、死にはしねえだろ。この程度の高さだし。」

「十分高いです。しかも落ちるとしたら腰からなんで絶対痛みでショック死します。」

真顔でしかし泣きそうな目でそう訴える正臣が可愛くて、抱きしめる手に力を込める。

「そんなもんか?・・・まあ俺は他の奴よりちょっと頑丈だからな。」

「そうですね。」

「まあそんなだから守ってやりたいって思うんだがな。」

にっこり微笑まれて正臣はうっ、と言葉を詰めた。

「・・・うるさいですよ」

そしてふいと恥ずかしそうに顔を背け、さらに染まった頬を隠そうと静雄の首筋に顔を埋める。やっぱり可愛い。そう思い静雄は正臣のサラサラの髪を優しく梳いてやる。
人工的に染められたそれは本来痛んでいるのが正しい姿だろうに枝毛などは一切見当たらずふわふわと風に乗るのみである。
そんなことを考えながら一房の髪を持ち上げハラハラと落としてみたとき、その髪越しに何やら黒い物体が見えた気がした。
しかし静雄は自分に見間違いだと言い聞かせた。こんな幸せな時間をあんなのに邪魔されてたまるか。そう思い、さりげなく距離を離すように動くが気がつくのが少し遅かった。

「あれれー?ここに俺の楽園があるー」

ニヤニヤと顔を緩ませながら音速もを超えるスピードで近づいてきた臨也に腕を掴まれてしまった。
そして臨也の声に気がついたのだろう。今まで静雄の首筋に顔を埋めていた正臣が顔を上げ、そのまま不快感をあらわにした表情へと変わる。そして、

「「げっ・・・」」

二人同時に臨也に対して不快感の塊である言葉を投げかけた。

「酷いなー、シズちゃんはともかく正臣くんまで。」

肩を竦めながら発されたその言葉にさらに正臣の眉間に皺がよる。

「だって嫌いですもん。」

「もんって、可愛いね正臣君は。」

「気持ち悪い。」

「右に同じく。」

どうしようもないらしい不快感を拭う為にもう一度静雄の首筋に額を擦り始めた正臣に静雄の表情筋は少し二人のときのそれに近づいたが、その隣でニヤニヤする臨也に気がつき表情を引き締めた。

「ねぇねぇ、二人で抱き合ってて素敵なんだけど。何これ本当に楽園?それだったら俺も入りたいんだけど。」

うずうずとまるで滑り台の順番を待つ少年のような表情に二人は噴出しそうになるが、それを何とか必死にこらえ否定の言葉を口にする。

「嫌に決まってんだろ」

「これは俺と静雄さんの楽園であって臨也さんには関係ないです。」

「ははは、そっか二人の大切な楽園なのかー。」

その言葉にめげないどころか嫌な笑みを浮かべた臨也はクルリと正臣の後ろに回り思いっきり抱きついた。。

「うあっ!?は、離れろ暑い!」

「二人だけの楽園なんて許せないから、壊しちゃうね」

至極素敵な笑みを浮かべたままの彼に両手がふさがってる静雄からの攻撃は届かない。

「おい、紀田が嫌がってんだろ、離せ。」

仕方なく口でたしなめるも、聞く耳など持つわけが無い。

「えー、ヤダ。」

口を尖らせてブーブー言う臨也の胸をぐ、と押し返しながら正臣が懇願するが一切離れようとしない。

「暑いんで、ほんと離れろ。」

「ほら、さっさと離れろ。」

しかし暫くして何を思ったかいきなり嫌な笑みを浮かべる。

「仕方がないね、まったくこれだから俺のお姫様達は。」

やれやれ、と心底困ったようにため息を吐いた。

「まったく。二人を平等に扱って欲しいならそういえば良いじゃない。」

素直じゃないなあ、なんて勝手なことを言っては二人の背中に腕を回して抱き締める。

「別に抱き締めて欲しいなんて微塵も思ってねぇ。離れろノミ蟲」

「またまたー、照れちゃって。」

シズちゃんのツンデレさんめ!と叫んでギュウと抱きつく。

「臨也さん、俺は良いですけど、静雄さんに抱きつくのやめてください。静雄さんが穢れる。」

そしてそれを見ていた正臣が面白くなさそうに呟いたのを聞き逃すわけも無く

「可愛いなあもうっ!正臣君は嫉妬してくれるしシズちゃんはツンデレだし!本当に何で君たちはそんなに可愛いの!」

にやにやと顔面を崩壊させながらそう叫ぶと、次は二人にだけ聞こえるように囁く。

「今すぐにでも食べちゃいたいなぁ。どう、3Pとか」

その次の瞬間、真っ赤に染められた頬を隠すように打ち上げられた二つの拳に、臨也は空を舞うことになる。









両手に花とはこのことだろうか。

(何あの変態!馬鹿臨也さん!)(あいつ一回死んでみたほうが良いんじゃないか・・・?)




実は今日誕生日の友達に送りつけた小説を書き直した奴だったりします。
要するに使いまわしです、すいません。

ていうか、ここ正臣受けサイトなのについにシズちゃん受け書いちゃったよ・・・!
あ、いや、オフでは幽静とか書いて絵師さんにネタ提供とかしてたんだけども←
べ、別にメインじゃないから良いよねっ!?
臨静はリバもいけます。ようするにただの雑食です。
正臣はリバ無理です。多分絵だとかは滾れるとおもいますが、小説はどうしても書けないの!←

でも基本雑食ですので何でもおいしいですもぐもぐ
最近臨波が来てます、何だか無事にノマもいける口になってました。デュラ恐ろしい・・・



では観覧ありがとうございました!





100719



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テーマ「人外ファンタジー」
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