やがて太陽は落ち
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「ほらよ、」

「うわぁ!ありがとうございます!」

黄色のラッピング袋にピンクのリボン。ふわっ、としているそれに正臣の心は奪われた。

「凄い可愛いですっ!」

目をキラキラさせながら笑った正臣の頭をポンポン。

「喜んで貰えて良かった。」

「ふふふ、俺は静雄さんから貰う物なら何でも喜びますよ」

「っ、そう言うことを・・・」

「だって本当の事ですから。」

にっこり笑いながら言う正臣に顔を真っ赤にする静雄。それを隠すように正臣の手を掴んで歩き出せば彼女はちょっと待ってくださいよ、と駆け足になった。

「あ、悪い。早かったか?」

「むぅ・・・静雄さんは一歩がおっきいんですよ」

「まぁそれは身長の差だな。」

「今!遠回しにチビって言いましたね!?異論は認めないぞ!?」

「言ってねぇっての。てゆうか女はちっさい方が可愛いじゃねえか。」

「っ・・・!し、静雄さんがそう言うなら・・・別に良いですけど・・・」

次は正臣が照れる番である。淡く染まった頬を隠すように俯いて、でもはぐれないようにしっかりと手を握って。

「まぁ、紀田の身長が例え俺より高くても可愛いことには変わり無いけどな。」

「っっっ!?もう、静雄さん恥ずかしいですよっ!」

プシューと顔から火が出そうなほどまでに染まった正臣は、気を反らせるためにプレゼントを見つめる。

「あの、これ開けても良いですか?」

「ん?ああ・・・じゃあどっか座るか。」
再び正臣の手を引いて公園に向かった。しかし歩くスピードは先程よりも明らかにゆっくりになっている。そういう無意識な優しさが好きだ、と正臣は隠れて微笑んだ。


静雄が入ったのは小さな子供たちがよく遊んでいる公園だった。奥の誰も居ないベンチに二人並んで腰を下ろす。

「開けて良いですか?」

「どうぞ。」

「それでは、失礼しまして」

シュルリとほどかれたリボン。続いて丁寧に開かれたラッピング袋。そしてその中に入っていた物に正臣の顔は綻んだ。

「可愛い・・・」

真っ白でふわふわな生地。今流行りのワンピースがそこには入っていた。

「この前これ見てただろ?だから、欲しいのかなって。」

ポリポリと頬を掻きながら照れる静雄が何だか可愛く見えてくる。ふふふ、と笑って頭の上に手を伸ばした。

「おい、」

ふわ、と乗せられた白く柔らかい手。静雄の柔らかい金髪をサラサラと撫でる。

「覚えててくれたんですね」

「・・・まぁな。その何だ、お前の事だから、な」

「嬉しいです。ありがとうございます。」
静雄に向かってにっこり微笑んだ正臣にドキドキと早まる鼓動。
それを抑えようと口を開いたとき、それは現れた。


「あれー?何々正臣くんとシズちゃんじゃなーい!ん?あぁ、今日は君の誕生日だったねぇ。おめでとう。ってことはさしずめコレはシズちゃんからの誕生日プレゼントってことかなぁ?」

視界を横切った黒はニヤリと笑うと正臣の前に立つ。

「っ、折原臨也・・・!」

「やだなぁ、そんなに嬉しそうな顔しないでよ。」

心底嫌そうな顔をした正臣に対してそう言い放った彼はクルリとプレゼントの中身を覗いた。

「ふぅん。シズちゃんは君にこんなのをねぇ・・・てゆうかこれシズちゃん一人で買ったんだ。恥ずかしくなかった?」

「臨也・・・手前いい加減に、」

「あ、そうそう正臣くん。男がね、好きな子に服をあげるってのは中々複雑な心情が絡んでいてね。」

隣で青筋を立てている静雄をチラリと見た後、言葉を続ける。

「まぁ色々有るからそこらは割愛するとして、要約するとね、服をあげると言うのは遠回しに脱がせたいって言ってるようなものなんだよ。」

「「っ!?」」

その言葉に怒りに満ち溢れていた二人の顔は一気に朱に染まった。

「ま、そういうわけで、俺は仕事があるから。」

じゃあねー、大きく手をふった彼はいつの間にやら人混みへと消える。その背をぼおっと追っていた二人がはっ、と意識を取り戻す頃には彼の姿はもう池袋には無かった。
暫く無言の状態が続く。
シーンとした空間の中に小さな子供たちの声が聞こえてきた。

「あの、よ。別に脱がせたいとか思って買った訳じゃねぇからな・・・?」

ボソッと呟いた静雄の視線は宙を舞う。空が赤く染まってきたなぁ、とどこかで思ったとき、隣から声が聞こえた。

「別に・・・脱がしても良いんですよ?」
「はぁっ!?ちょ、おま、」

あからさまに狼狽する静雄。視線を隣へと移すと太陽を見つめる正臣の顔。「俺、静雄さんなら・・・脱がされたい、です・・・」

「・・・紀田、それは・・・」

「あぁもう!だから!誘ってるんです!」

分かれよニブチン。そう言ってベンチの上で三角座りを始めた正臣。
困った、そう口の中で呟いて髪をかきむしる。

「あー、じゃあ・・・・俺んち来るか?」

「っ、はい!」

ガバッ、と顔を上げた正臣の頬は赤く燃えているような錯覚に陥るほど燃えていた。
そして自分の頬からも火が出ているような気がしたが、ゆっくりと落ちていく夕日のせいと言う事にしておく。











やがて太陽は落ち

(濃紺の闇が覆いかぶされば)(二人だけの世界が出来上がる。)




うふふふふ、にょた臣は書いてて楽しいなあはぁはぁ^///^
静♀正は基本的にお互いがお互いを可愛いとか思ってたら良いと思います///
では水神璃音様!正誕リクエスト協力ありがとうございました!





100706



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