彼は、男にとって花のような存在であった。
初めて出会ったのは夏。
いつでもクルクルと笑いながら誰にでも挨拶をしていた彼。それは例外なく自分にも。
その笑顔はまるで太陽を全身に浴びて輝く向日葵のようで。
一目見て恋に落ちてしまった。俗にいう一目惚れである。
彼の明るい茶髪が日に当たって光るのを、本当に向日葵のようだと思った。
夏は彼によく似合う。
次に出会ったのは秋。
彼の身体には黄色の布が巻かれていて、初対面の時を思い出した。
確かあの時感じた彼の色は黄色。向日葵の花弁の色だから、という単純な理由である。
だかしかしそれは間違っていなかったと感じる。やはり彼の色は黄色。
秋の夜美しくそして妖艶に光る月のように。
黄色の布を纏った彼は何とも言えない美しさがあった。
そして三度目の出会いは冬。
彼の身体には何だか傷が増えたような気がする。
実際腕にはちらほらと傷痕が残っていた。
以前のように誰彼構わず挨拶することは無くなったが、目が合った瞬間にっこり微笑まれた。
「よぉサイモン!久しぶりじゃねぇかっ!」
普段通りの声色に普段通りの笑顔。彼はそのはずだったのだが男にはわかった。わかってしまった。
力の無い微笑み、覇気の無い声。
その時降ってきた雪が一瞬視界を妨げる。
そして再び見た彼に強い違和感を感じた。
秋まで馴染んでいた腕に巻かれたその黄色が少し浮いて見えたんだ。
やはり季節は巡るもので木々が萌ゆる春。
桜よりも先に異彩を放つ少年と現れた彼。
「竜ヶ峰帝人です、えっと・・・よろしくお願いします、サイモンさん?」
不思議な感覚。少年に対する純粋な違和感を感じ取った。
笑顔に隠れた狂気。愛に満ちた視線。
しかし少年の肩に己の手を回した彼の笑顔を見てその考えを打ち消した。
こんなに幸せそうに笑っている彼を見た事がなかったから。
そんなとき梅の花びらがひらり。
彼には淡いピンクも似合うのだと気が付いた。
彼はもう、黄色を身につけては居なかった。
そして月日は流れ、彼は再び黄色を纏った。
「杏里っ・・・帝人・・・!」
何かを守る為に必死な彼。どうしても、どうしても、ともがき続ける彼を純粋に綺麗だと思う。
そしてそれと共に、どうしようもなく儚く感じた。
その後ろ姿が、雰囲気が、声が、彼のすべてが街に溶けてしまいそうだと思う。
気が付けば駆け出していた。
すぐに追いつく彼を後ろから抱きしめる。
「Держите его!(待って)」
「さ、もん・・・?」
「Хотите, чтобы защитить вас(お前を守りたいんだ)」
「はは、何言ってるか分かんねえよ・・・」
そう言いながらも彼は静かに涙を流していた。
「ワタシ、紀田を守りタイヨ、ワタシ、紀田のお守りネ。」
「っ、意味わかんねっ・・・」
静かに、静かに・・・・・
流れた涙は黄色の上に落ち、シミを作る。
その時男は思ったのだ。
やはり、彼には黄色が似合うと。
yellow
(いつまでも君に黄色が似合うように)(守らせてはくれませんか?)
あれ、あれ・・・?「サイ正で正臣を自分の手で守りたいと思うサイモン」ということでしたが・・・あれ?
これってほのぼの〜な物を想像したよね・・・?なのになにこのシリアス感。
本当久しぶりにこういうの書きました。
サイ正ってどんなのが一番美味しいかな、と考えた結果こんな感じ。私の脳内の限界でした
でも、サイ正って凄く美味しいと思うんです。
エロとか無くて、すごく純粋な感じがたまりません^///^
では、正誕リクエスト協力ありがとうございました。
100713