いつしか雨は止むように
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間違えて送られてきたメール。
文頭が違う名前なのだからその事に間違いはないだろう。
それに仮にもし名前がなかったとしても、間違いメールだと気づいていただろう。
その理由は文面にある。
そこに述べられていたのは切ないくらいの彼の生活。まさか自分に彼がこんなことを相談するとは思えない。
しかし、もし彼が意図的にこれを送ってきていたら、と思うと居ても立っても居られなくなり気がつけばトレードマークのコートを掴み、駆け出していた。




池袋に着けば外は大雨。そう言えば都内に大雨警報が出ていたかもしれない。
道は傘で埋め尽くされ、パチパチと雨がメロディを奏でていた。そんな中、一人雨を一身に受け止める少年を見つける。
ぼうっと空を見上げながら立ちすくんでる少年の纏うパーカーはずいぶんと水を吸って重くなっていた。そのまま水に溶けてしまいそうな彼を抱き締めなくてはいけない。本能的にそう感じたのだ。

「正臣くん!」

ギュッと抱き締めれば何の抵抗もなく収まった彼に疑問を覚える。しかしそれよりも表面の冷たさと額の熱さに気をとられてしまった。

「凄い熱だよ?取り敢えずこれ着て。」

バサッと己の着ていた上着を被せれば、ザァァ、と降る雨が臨也のVネックに染み込む。冷たく張り付く服に軽い苛立ちを感じながら再び彼を抱き締めると、腕の中にいる彼が何だかいつもより小さく思えた。

「なんで・・・あんたが居るんですか・・・」

ぼそり、と呟かれたその言葉は酷く震えている。

「君が俺に間違って送ったんだと思うよ。まぁ来たのは気になったからだろうなぁ。」

出来るだけ雨に濡れないように抱き締めれば胸板が彼の熱い涙で濡れた。その中で乾いた笑い声が溢れる。

「はは、やっぱりダメっすね、俺・・・通りでいつまで経っても誰も来ない訳だ。・・・ねえ臨也さん。俺はいったいどうしたら良いんでしょうか。もうわからないんです。人一人救えない、友達一人正気に戻せない。そんな不甲斐ない俺って誰が必要とするのかなって。っ、・・・そう考えたら、なんかど、んどんマイナス思考にな、っていって・・・・・・それでっ、も、俺、って、必要な、って思、おもって、それでっ・・・!」

嗚咽が混じった声でしゃくりあげた彼は普段の冷静さを無くし、年相応な姿をさらけ出していた。
不安と自己嫌悪が入り交じった心の声に、感情の篭ったそれにカァッと胸が熱くなっていく。無意識に抱き締める腕に力を込めていたらしい。先ほどより近くなった距離に息を詰めた彼に囁くように口を開いた。

「俺はそうとは思わないけどねぇ。だってさ、正臣くんは少なくとも俺の心を動かすことは出来るわけだよ?滅多に動かないと自負してる俺の心をね。それにさ、俺はそういう不器用で人間らしい所だって君の魅力の一つだって思ってる。だから、正臣くんはそのままで良いんだよ。誰も必要として無かったら君の回りに人だかりは出来ないからね。それに、もし君がどうしても自信が持てないと言うなら俺が何度だって言ってあげるよ。」

「・・・なにをっ」

「俺がどれだけ君を必要としているかをね。」

そう言い終えてから、雨に濡れない場所まで連れていこうと持ち上げる。意外と簡単に持ち上がった彼の身体に少し驚きつつ、しっかりと抱き止めればおずおずと首に腕を回された。

「なんか今日だけ優しいです・・・」

ずるい、ボソッと呟かれた言葉に苦笑いをこぼす。

「おかしいなぁ。俺はいつでも優しいけど?」

「嘘は良くありません。」

「はは、もっともだ。」

少し落ち着いてきたらしい彼に胸を撫で下ろしたとき、耳元に届いた小さな声に思わず頬が緩んでしまった。







「ありがとうございます。だ、大好き・・・です。」





いつしか雨は止むように

(心に降る雨もまた)(いつかは止むと知っていて)





「ついてない正臣君が臨也さんに救われるとか」というわけで・・・

臨也が妙に偽善者ですね。
今回は初のホワイト☆臨也を目指しました。

では、正誕リクエストご協力ありがとうございました!








100716



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