何枚も上手の貴方
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※18才


「ん・・・」

朝目を覚ませば目の前には幼さの抜けた整った顔。昔から変わらない短髪に指先で触れれば何だか小学校の事を思い出した。

(あの頃は俺と噂たてられて泣いてたってのにな。)

今はこんな関係なのに、と少し不思議な気持ちになる。

(そういえば帝人の学校生活ってどんなんだろう・・・やっぱりモテるのかな・・・)

もう一度帝人の顔を見て溜め息。童顔のころはどちらかといえば可愛い(しかし正臣は格好いいと思っていた)部類だった彼の顔はいつしか格好いいものへと変化していった。さらに背も伸び、筋肉量も増え、細マッチョまではいかないが、そんな感じの体型だ。
そんな彼を女性達がほっておくわけもなく、やはり取り巻き、と言うものが存在するらしい。

(どんな人達なんだろ・・・気になるなぁ・・・)

一度気になれば最後。解決するまで気が済まない質である正臣。

(よし!今日は帝人の学校に行こう!)

そんな時、帝人は目を冷ました。











♂♀


「・・・正臣。」

「あ、帝人、おはよー」

「おいで。」

手を大きく広げる帝人。迷わず飛び込めば頭と腰の後ろに手が回る。

「んんっ・・・」

どちらともなく合わせられた唇の感覚に蕩けながら正臣は脳内に記録を残すのだった。

【8:30 起床】





続いて服の中に手が差し込まれたがやんわりと止め、

「帝人、今日平日。」

「え?・・・・ええっ!?今何時?」

「8:30過ぎかな」

「あわわわわ、ヤバイヤバイ!」

慌てて着替え始めた帝人。上を脱いだとき、背中に爪痕を見つけ、居たたまれない気持ちになる。
少し顔を赤らめているとそれに気づいたらしい帝人はわざと背中を見せつけるようにゆっくりと服を来ていく。

「っ・・・」

「正臣もそろそろ着替えたら?」

「あー、うん・・・あ、朝ごはん作らなきゃ。」

「僕今日は時間ヤバイから要らないや。」

「ん、わかった。」

帝人が玄関に向かったのでズリズリと布団から這い出て正臣も玄関に向かう。

靴を履き終わったらしい帝人はクルリと内側を向いて正臣の頬に口づけた。

「いってきます。」

「いってらっしゃい。」

それを当たり前のように受け取って正臣は帝人に手を振る。

「正臣も遅れないようにね?」

そう彼は念押ししてから家を飛び出したのだった。


【8:45 出発】



さて、と正臣は自分の部屋に戻り日頃買い溜めておいた変装グッズの紙袋を開ける。。その中に入っている着なれない服を出来るだけ早く着て、帝人の後を追った。



♂♀

それにしても大学は便利なものである。他校の学生が多少混ざっていても気がつかないし気にしない。
普段はその制度に対して安全面はどうするんだと文句を言っていたが、今日だけは礼を言いたくなった。

「んでっと・・・帝人は確か・・・こっちか?」

長くウエーブのかかった髪をなびかせれば男達がこちらを振りかえる。
そう、何を隠そう正臣は今女装をしているのだ。今時の少女を演出するべく流行もきちんと盛り込まれたそのコーデは道行く人々が振り返るほどである。

(我ながら・・・完璧・・・)

鏡の前でチェックした時は自画自賛してしまった程である。
そんな事を考えているうちに正臣の周りには人垣が出来てしまっていた。その中の一人に近づき首を傾げる。

「あのー、一回生の竜ヶ峰帝人くんって今どこにいらっしゃるかご存知ですか?」

いつもより半オクターブ高くした声で訊ねれば巧く騙せたらしい。少し顔を赤らめてワタワタした後、講義室まで連れて行ってくれた。

「こ、ここです・・・」

「ありがとうございます。」

にっこり笑ってお礼を言えば早々に走り去ってしまう。
そして扉に手をかけガラ、とドアを開いた。そして、

(あ、帝人発見)

【10:30 講義室で級友と喋る帝人】


案外大きな音だったらしい。入った途端皆の視線がバッ、と集まる。その中でも最も驚いているのは多分帝人。

「帝人くん。」

「だ、だれ・・・って正臣?」

「の姉の正美です。」

にっこり笑ってやれば駆け足で近寄ってきて正臣の手を掴んだ。そして級友に一言「後は頼んだ」と叫んで二人で飛び出す。
そして非常階段の近くまで走った所でようやく立ち止まった帝人はクルリと正臣の方を向き返り一言。

「そういう格好はデートの時だけにしてくれないかな、正臣。」「え?」

「あのさ、一応恋人の特別な姿なんて他の人に見せたくないんだよ。」

「あの、だから・・・」

「ああ、僕にごまかしが効くとでも思った?」

真っ黒な顔でニッコリと笑った帝人に勝つ術など無い事は100も承知で。

「・・・ごめんなさい」


【10:40 発覚】

「分かれば良いよ」

心から謝れば抱き締められた。首もとに顔を埋められ、くすぐったいと身を捩れば腰を抱きすくめられ身動きが取れなくなる。

「それにしても可愛いね。」

「っ、」

耳元で囁かれたその言葉に正臣は頬を染めるのだった。












何枚も上手な貴方

(所で何で学校来たの?)(・・・帝人が普段どんな私生活を送ってるのかなぁ、って)








あああああ!
「18歳の帝正で帝人の大学ライフを正臣がストーカーしてみた(二人は違う大学)」ということでしたのにいつの間にか帝人様がストーカーに気付かれてたぁぁぁ!しかも勝手に女装とか入れてすいませんorz
では、東館 海様、正誕リクエスト協力ありがとうございました!













100708



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