「Thank you, love you」
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「今日も来ない・・・」

はあ、とため息を吐きながら身体をベッドに投げ出す。
携帯のディスプレイは〔6/21 0:02〕と表示している。

「もう2日経ったよ臨也さん・・・」

枕を抱きしめても恋しいあの人の匂いなんて付いている筈も無く、ただただ虚しさだけが溢れていく。

「やっぱり、俺の誕生日なんてどうでも良いんだ。」

呟いたあとで後悔。どうでもいい、という言葉がグルグルと頭の中をループする。
じわ、と滲む涙を乱暴に拭って布団にもぐりこむ。

「一応、付き合ってるはずなんだけど・・・な・・・」

そのことさえも自分の一方通行なのではないかと心配になる。
嫌だ嫌だ、ネガティブになるんじゃないと言い聞かせても、思考は嫌な方向にばっかり向いていってしまい、正臣を苦しめた。
胸の辺りがギュウ、と締め付けられ、息が出来ない。
思考を埋めるのはもう三日も会っていないあの人の事だけで。

「苦しい、くるしいよ・・・臨也さん・・・」

自分がこんなにあの人を求めるなんて思わなかった、と心のどこかで思いながら瞳をとじた。











「ん・・・」

暑い。六月の癖に、と小さく悪態を吐きながら起き上がろうとしたが身体が動かない。上から押さえつけられているような、何かに抱き付かれているような、そんな感覚。

「?」

目の前には何も無いのに、と寝返りを打って気がつく。

「・・・・っ!?臨也・・・さんっ!?」

よく知った匂いが鼻腔をくすぐる。
上を見ればあどけない臨也の寝顔。初めて寝顔見たな、などと感心しつつ、心は愛しさと喜びと一抹の不安でパンクしそうだった。

「ふぇっ・・・臨也さっ・・・!」

心の混乱ゆえに流れ出した涙は先ほどのように拭われることは無く、臨也の服へと落ち、シミを作る。
それが冷たかったのだろう。瞼が静かに震えた後、ゆっくりと開かれた。

「ん・・・・?ああ、おはよう正臣君。起きたの?」

背中に回る腕の力は少し強まった気がした。

「臨也さ・・・臨也さん!い、ざや・・・さんっ・・・」

縋りつくように抱きつけば頭を撫でられ少し落ち着く。

「遅くなってごめんね。色々あってさ・・・お誕生日おめでとう。」

「!?覚えてっ・・・!?」

驚いて顔を上げれば心外だ、という表情をした臨也。

「俺が愛しの正臣君の誕生日を忘れると思う?」

「で、でも・・・メールも電話も無かったから・・・」

俯けば小さなため息が上から聞こえてビクン、と肩が震えた。

「あのね、俺は直接言いたかったんだよ。でも、ちょっと色々あってさ、俺も忙しかったんだ。」

そういって、正臣の額にキスを落とす。

「そう、ですか・・・なんにせよ、ありがとうございます・・・」

消え入りそうな声で呟けば、うん、と上から降ってくる声。

「じゃあ三日遅れのパーティーでも始めようか?」

「は?」

「ほら、俺はお祝いちゃんと出来てないわけだしさ。」

「いやいや、俺今日学校っすよ?」

「だからわざわざこの時間に来たんじゃない。」

「はあ・・・」

言うが早いか、踊るように起き上がった臨也は部屋の電気をパチ、とつける。

「ええええ、っええええええ!?」

そしてそこのあった光景に思わず正臣は叫んでしまった。
あたり一面に置かれた薔薇の花。
プレゼント。
そして机の上に置かれたケーキ。


「Happy Birth Day,Loved Masaomi?」

流暢な英語で言った後、恭しく手の甲にキス。
その動作が妙に王子様のようにかっこよくて。
くやしかったから普段なら絶対に言わないような言葉を囁いてやれば、珍しく頬を高潮させた後、負けたよ、と言った。

















「Thank you, love you」

(プレゼントの山よりも、)(貴方が俺の誕生日を覚えてくれていた事が嬉しかった。)















正臣のデレのターンです。
デレ臣可愛いよデレ臣はぁはぁ^///^
ゆみあ様!正誕リクエスト協力ありがとうございました!





100621



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