珍しい人からのメール。
あまりにも珍しすぎて暫くの間携帯の画面を凝視してしまった。
画面には短い一文のみ。
「露西亜寿司に午後七時」
はて、今日は何かあっただろうか、とスケジュール帳をめくるも何かの休日なわけでも、記念日でもないようだ。
本当に何なのだろう。正臣は小首を傾げながらも出かける用意をするのだった。
あれから1時間後、正臣は露西亜寿司の前に居た。
しかし、送信主の姿は見えない。おかしい。自分を呼び出すときは必ず10分前には居るのに。しかもそれどころかいつも居るサイモンの姿も見ない。店に明かりはない。さらにドアには「臨時休業」の文字。
「あれ、俺の読み間違い・・・か?」
再度手元の携帯をパカリと開くも、そこには確かに露西亜寿司と書いてあって。では先方の間違いだろうか、と考えるもそれは無いだろうとその可能性を数秒で否定した。
「とりあえず、七時まで待ってみよう。」
呟いて向かい側にあるコンクリートへ腰を下ろし行き交う人々をぼーっと見つめる。綺麗なお姉さんが通っても何故かナンパする気になれず、ただただメールの送信主を思い浮かべて宙を見つめていた。
そしていつの間にかやってきた一分前。数分前から何の変化も無いそこを見つめ、溜め息。
(59、58、57・・・・)
思わず秒数を心の中で数えてみて苦笑。自分は一体何をしているのかなんて思ったり。
(時間が過ぎても来なかったら・・・よし、五分経っても来なかったら帰ろう)
そう心に決めて再度宙に視線をさ迷わせた瞬間だった。
「紀田くーん?」
「ひゃああ!?って、遊馬崎さんっ!?何でここに?」
後ろからバッ、と現れた遊馬崎は正臣の背中を押す。
「はいはーい、行くっすよ?」
「え、え、あ、あの・・・?」
いつもより会話がかみ合わない遊馬崎に圧倒される正臣。
ずんずんと背中を押され、あれよあれよと言う間に入り口まで到着する。
「はい、生誕祭の始まり始まりーっすよ!」
言葉と共にガラララ、と開け放たれたドア。その先に見えた光景に息を呑んだ。
「っ、こ、れは・・・?」
黄色、赤、ピンクと普段からは考えられない程カラフルな店内。
そして、狩沢、サイモン、渡草、そして門田の四人がクラッカーを一斉に鳴らしたことにより一段と室内のカラフルさが増していた。そして何より、
『HAPPY BIRTH DAY KIDA !』
と書かれた暖簾に目頭が熱くなる。
「あははははー、驚いてくれた?紀田くん!」
正臣を覗き込んで微笑みかける狩沢。
「驚いてますって!だって門田さんがほら、クラッカー鳴らしてるんすよ?俺初めて見たっす!」
目を輝かせながら語る遊馬崎。
「キダー、タンジョウビ、オメデトー。オトナノカイダンヲイマイッポススンダヨー!」
「それを言うなら大人の階段を上がる、な?」
珍しく寿司を握っているサイモンと、彼の発言に突っ込む渡草。
「紀田。一日遅れちまったけど、誕生日おめでとう。」
珍しく帽子を脱いだ門田。
正臣は涙越しにそれらを見、そして張っていた涙が一滴ポタリと零れた。
「っておい、紀田っ?」
一度流れた涙は止まらずに正臣の頬にいくつもの筋を作る。
「お前、なんで泣いて」
「ありが、とうっ・・・ございますっ・・・うれしっ、くて・・・ついっ・・・!」
門田の言葉をさえぎって答えれば、そっか、と狩沢が頭を優しく撫でた。そんな時、厨房の方からあの白人の声。
「おーい、握り出ー来たぞー?」
その少し間延びした声に一瞬その場は静まり、そして誰となく笑い始めた。
「そういうわけらしいから、食うか。」
「そうっすね。」
「はいっ!」
それは正臣も例外ではなくて。先ほどまでの涙はどこかへ飛んでいってしまったらしい。柔らかい表情を浮かべてニコニコしている。
わーい、寿司だー!と、はしゃぐ彼の腕を引く手。
クルリ、と振り返ればそこには門田がいて。
次の瞬間には門田の腕の中に閉じ込められていた。
「あわふっ、か、門田さん?」
手を背中に回しながら顔を上げると、門田の視線と視線が絡み合う。
「一日遅れちまったけど、どうしてもお前を祝いたくてな。」
「門田さん・・・」
「ハッピーバースデー、紀田。生まれてきてくれてありがとう。」
「ーーー〜っ!恥ずかしいですよ・・・っ」
むぎゅう、と思いっきり門田に抱きついて顔をうずめる正臣。
しかしそれですべてを隠せているわけはなくて。
(首まで真っ赤だ。)
眼下に晒された真っ赤なうなじに静かに口付けを落とすのだった。
密かに交わされたのは愛の言葉
(ふふふふ、生まれてきてくれてありがとうだって!シズちゃんとイザイザ並みにドタ正萌えっ!)(・・・もう俺は何も言わないっす)
短い・・・orz
最初のほうに立てたふらぐが回収しきれて無い感が漂っていますがそこには目をつぶってやってください!
では正誕企画への協力リクエストありがとうございました!
100620