土曜日。
小鳥の鳴く声で目を覚ました。
んんー、と思いっきり伸びをしてコキリと首を鳴らす。
「お誕生日おめでとう、俺。」
自分で言ってむなしくなった気持ちを無視して再度横になる。たまの寝坊ぐらい良いだろう、普段の自分へのご褒美だ、などと誰に対する物でもない言い訳をして。
と、枕元で動く携帯。
液晶の光が目に痛くてもう一度ゆっくりと体を起こした。
「んん・・・誰だよ・・・」
暫くして液晶の光は無くなる。スッ、と携帯を開けて目を見張った。
メールメールメールメール
未読メールが1、2、3、・・・・たくさんと着信、留守番。
「うわ・・・・俺ってば愛されてる?」
なーんてな、そう言って一件ずつ確認すれば「おめでとう」の羅列。
自然と零れる笑みを噛み締めた。中でも
きだくん おたんじょうび おめでとうございます
という杏里からのメールに胸が暖まる。
「杏里も長文打てるようになったんだな。」
しみじみと成長を口に出して幸せを噛み締めた。
しかし、どこか物足りない。
たくさんのメールの件名を何度確認しても見つからない彼の名前。
「忘れてる・・・のかな・・・帝人・・・」
胸の辺りがぎゅうっ、として思わず踞る。
ぽっかりと空いた空間を埋めるように足を抱き寄せても何も埋まらない。
「なんか、寂しい・・・な」
知らず知らずの内に涙が頬を伝っていた。
ピーンポーン
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。むっくりと起き上がって時計を見れば、もう既に12時を過ぎていた。
「うわ・・・午前中なんもしてねーよ」
所々跡のついた髪の毛をガシガシと掻き回して呟く。
「ほんと、誕生日ってなんなんだろ・・・」
ピンポンピンポンピンポンピンポーン!
そして猛々しく鳴るチャイムに自分がなんの音で目覚めたのかを思い出し、そのまま玄関へと直行した。
ガチャリと鍵を開け、続いてドアを開ける。そこで正臣を待ち受けていたのは、
「はいはー・・・うわぁ!?」
真っ赤な薔薇。薔薇薔薇薔薇。視界が薔薇一色に染まる。そしてその薔薇を通して見えたのは、
「みか・・・ど・・・」
「お誕生おめでとう正臣。」
朝からずっと求めていた、彼。
ぶわ、っと溢れてくる涙で薔薇も彼も歪んで混じる。
「遅くなってゴメンね?」
薔薇を足元に置いて正臣を抱き締め、優しく頭を撫でて静かに額にキスを一つ。
「あり、がとうっ!」
帝人の襟元に瞳を押し当てて抱き返す。
「あはは、冷たいよ。」
ポンポンと背中を叩いてあやす帝人に更に涙が溢れた。
「ふぇぇ、だって・・・だって、うわぁぁぁん!」
「え、ちょ、正臣?」
「さっ、まで・・・帝人にっ、わす、忘れられたんだ、ておもっ、・・・ひぐっ・・・だ、お前、メールも電話・・・グスッ、もしてこな、しっ・・・だからっ!」
「あー、もう分かったから良いよ。ゴメンね?でもさ、僕は直接お祝いしたかったんだよ。ちょっと遅くなったけどさ。」
だから、 泣かないで?優しく涙を拭って目元に優しいキスを落として。
「そうそう、もう一つの誕生日プレゼントはさ、まぁ僕なんだけども、どうする?」
「ふぇ?」
「だから、今日は何でも正臣の言うこと聞いてあげるよ?」
「えええ、おま、ええええ!」
「取り敢えず、ベッドに戻ろうか?」
「ーーー〜っ!へんたいっ」
「正臣に対してだけだよ。」
いつのまにか正臣の涙は止まっていた。
Happy Birthday For My Self !
(生まれてきてくれてありがとう、正臣。大好きだよ)(・・・ありがと、俺も大好き。)
正臣ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!お誕生おめでとうううううううあああああああああ!愛してるよ!!生まれてきてくれてありがとう!!!
もう、帝人様に食べられちゃっても良いのよ?
100619