2011/09/04 06:10 ※後天性女体化 ※ありがち 「坊、坊、起きたって下さいよぉ坊!」 ゆさゆさと身体を揺らされて思わず眉根を寄せる。目覚ましはまだ鳴っていないし、そもそも先程寝たばっかりだ。 それなのに何故起きなければならないのか。 「まだ目覚まし鳴っとらんやないか」 どうせ虫が居る、だとか、トイレに行きたいけど暗くて怖いから付いて来て、だとかそういった些細な事だろうと推測し、目も開かずに答えれば、せやけどちゃうんやて!と叫ばれる。 「ぼ、坊に確かめて欲しい事があるんやんか!」 その時、勝呂を掴む手が震えていることに気が付いた。勝呂は顔こそ泣く子も黙る厳つさだが、元来心優しい男なのだ。例え勝呂にとって取り立てて重大でも無いようなことで起こされたって、なんだかんだ言いつつも付き合ってやろうするのである。 そしてそれは今回も例外ではない。 「しゃあないなぁ」 わざと大きな溜め息を吐いてから、ゆっくりと目を開けた。 と、先程まで閉じていた目に蛍光灯はあまりにも眩しくと世界が輪郭を持っていない。それでもとりあえず、とムクリと上半身を起こした――のだが。 ムニュッ 「うわぁっ」 「ん……?」 そんな勝呂の顔面を受け止めたのは、柔らかな何かだった。 額にぶつかっているそれをそのままに思考を巡らせる。 とは言っても、寝起きの頭ではまともな考えが浮かぶ筈もなくて、それが何だか分からない。 「何や、これ」 そして顔を上げて確認すれば良いのだということすら思いつかない勝呂は、布団に潜らせたままだった手を持ち上げると、徐にそれへと触れ始めたのだ。 それにしても、何て弾力性のあるものだろうか。柔らかいのにしっかりと芯があるような。それでいて、一ヶ所だけ妙に硬い。そこがどうにも気になって、何度も何度も指を往復させていると、坊!という叫び声と共に、ペシッと頭をはたかれた。 それによって覚醒する頭。 そうして漸く何かから額を外した途端、勝呂の顔は呆けたのだ。 「坊変態さんや!」 瞬間、勝呂は赤に染まり、そして目の前には今にも泣き出しそうな表情を携えた廉造が、否、廉造に良く似た少女が“何か”の前で腕をクロスし座り込んでいることに疑問符を浮かべる。 その、膨らみは一体何なのだ。 「今までも坊は寝起きやてことをええように利用して女の子のおっぱいとか揉んできはったんや!」さいていや!髪の伸びた廉造に良く似た少女はふるふると震える。 「んなわけあるかい!ていうか、それは何やねん!」 「なんやねんとは失礼な!さっきまで坊が揉んでいじっとったやつですやんか!」 「そんなんわかっとる。俺が聞きたいんはそこやない!理由や!」 「分かっとって揉んではったん!?ほんま……めっちゃ悪質やで!」 「そないな意味やない!何で、お前にそないなもんくっついとるんやって聞いとんのや。」 「そんなん俺かて知りませんよ!何や身体暑い思て起きたらボインボインしとったんやんか!」 むっ、と頬を膨らましてそっぽを向いてしまった廉造。頬を真っ赤に染めて、アホ、変態、さいてい、の三つを呟き続けている。こんな時は何も言わない方が良いのだということを知っている勝呂は、全く困った恋人だと思いつつ、本日初めてまじまじと廉造を眺めたのだ。 生え際から等間隔になるよう切りそろえられた髪の毛は眉毛にかかる位まで、後ろ髪は彼独特のうねりを持ちながら胸元まで伸びている。その下に隠されているのは夜間着に使用しているTシャツを押し上げる程の胸。それから少し服がだぼついているように見えるから、きっと体格も変わってしまっているのだろう。今は片方しか見えない瞳は普段から大きい大きいと思っていたが、さらに少し大きくくりっとしているような気がする。 その時勝呂はどうしても彼女に変わってしまった彼を正面から見たくなったのだ。 きっと可愛いのだろう。勝呂だって男だ。廉造程ではないにしろ、女の子は好きであるし、愛する恋人が女の子だなんて、見たいに決まっている。 「志摩、」 試に彼を呼んでみるけれども、やはり顔をそむけたまま。 「志摩」 もう一度。勝呂がそっと呼ぶも、やはりこちらを向かない。勝呂の足の上に乗って、顔だけをそむけている廉像は、相当にご機嫌斜めのようである。 「そういやなんか確かめたかったんとちゃうんか」 と、ふと思い出した寝起き直後の言葉。 そう、彼は自分に何か確認してほしいのだといっていたはずである。 「もう嫌っちゅうほど納得させられましたからええんですぅー」 「はぁ?」 「坊がやらしゅう感じに揉みよるから、ちょぉ感じてしもたんやもん」 少し頬を赤らめながらそういう廉造は、隠していた自分の胸をもにゅもにゅと揉みながら話す。 「あんまりにも信じられへんたから、夢やないか確認しよ、てパチンと一発かましてもらおう思ったんや。でも坊揉まはるし、ちょっとだけ……その、き、気持ち良かったし、気持ちええんやったら俺の夢や無いんやなぁって。」 それから勝呂をチラリと見やるとこう続けたのだ。 「それから……あんな、ぼん。この身体やったらもしかしたら子ども産めるかも知らん……」 胸を揉んでいた廉造はその手を勝呂の胸板に置き、少し顔を近づけるととんでもないことを言い始める。 「なぁ、試してみぃひん?」 シュルリ、と勝呂の耳元に入り込んできたその声に、勝呂は口角を上げたのだ。 −−−−− 途中で面倒になったからこっちに移動だなんて……! もう脈絡もなにもないただのヤオイだよこれ |