帝正

2011/07/07 20:56

7月7日、七夕。

「帝人!短冊に何書いたんだ?杏里か?杏里なのか?まぁむっつりな帝人くんは心の中の短冊にしか書けないかー!」

「何で園原さん!?ていうか人の短冊覗かないで……うわっ、ちょ、返そうよ馬鹿臣!」

ピラリ、と短冊を手に幼い笑みを浮かべる正臣と、取り返そうとする帝人は、例の如く二人っきりのイベントを楽しんでいた。

「返す返す!まあ俺が読んでからだけどなーっ!ええーっとなになに?」

男二人の、傍目から見れば実に虚しいそれは、しかし二人にとっては充実している時間である。
帝人の短冊を持っていない方には正臣の短冊が握られていて、帝人のものと同じく文字が書かれていた。

「来年も正臣と一緒に七夕を迎えられますように。」

声高々と読み始めた正臣だったが、酷く尻すぼみになってしまっている。
そして赤くなった頬を隠すように俯くと、小さく笑ったのだ。




ジトジトと降り続ける雨。
よりによって梅雨明けもしていない、むしろ梅雨まっただなかのこの時期を選ぶなんて、神様はどうしてこうも意地が悪いのか。
何度見たって、どれほど見続けたって一向に良くなる兆しはないし、空は暗くて、今日はとてもではないがこれから天の川が見えるようには思えない。
正臣は昨年着た着物を徐に引っ張り出してみた。
紺地の地味な感じの出で立ちをしているそれは、彼との初めてのお揃いである。
そして、その隙間から覗くクシャクシャになった紙を拾い上げた。
途端、涙が溢れ出す。
見慣れていた筈なのに懐かしい、彼の字体が目に入ったのだ。
そして懐かしいと思ったその気持ちを酷く寂しく思う。
外は相変わらずの雨模様で、織姫と彦星はまたお互いに会えない一年間を過ごすのだろうか。

「約束なんて、破っちまえよ」

その声は震え、零れた涙は短冊を濡らした。

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