帝正

2011/01/22 07:32

例えば君が蝶だったら、そういって微笑む少年。
「例えば君が蝶だったら、僕は何やら甘い蜜を出す花になって君のよりどころになりたいな」

少年は少し狂気に飲み込まれた、しかし真っ直ぐな瞳を彼に向けながら静かに言った。
けれども彼は同じく静かに首を振る。
そして呟いた。
俺は蝶にはなれないと。蝶かと思わせるように優雅に空を舞いながら、しかし止まった瞬間人々に忌み嫌われる存在となる蛾だと。確かに良く似ている二つだが、ただ一つ、愛されているか愛されていないか、そこだけが違うと苦笑した。

けれども、と少年は思うのだ。彼が蛾であるわけがないと。
彼は確かに愛されている。自分や数多くいる友人などに。
愛されて愛されて愛されて愛されてなおも愛されて、彼の周りには愛が確かに存在した。
だけど、彼が愛されていないと思い、愛されてはいけないと自らを律するのであれば。

それはそれで構わないとさえ思うのだ。
だから少年は彼が苦笑したと同時に微笑む。

「じゃあ僕は蜘蛛になろう。君が舞い疲れたその時は、僕が君の全てを受けとめてあげる。」

その言葉には少年独特の狂気が見え隠れしていたが、それよりも多くの愛情で溢れかえっていた。






たまに書きたくなるこういう話。

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