小悪魔天使

女子の事なら俺に任せろ。今までは散々周りにそう言いふらしてきた。女子人気ナンバーワンの俺からすれば当然の事である。その俺がたった一人の女子改め天使に振り回されるとは一体何事か。俺は今、目の前の天使をどう振り向かせようか必死だった。

「東堂くん、話ってなあに?」
「ああ、今度の日曜日、苗字さんさえ良ければランチにでも、と思ったのだが…」

どうだろうか、と東堂尽ハ勇気を振り絞ってデートに誘ってみた。全身に緊張がほとばしる中、彼女はえっと、と歯切れの悪い返事をしてきた。嫌な予感がする。

「ごめんっ日曜日ね、先客がいるの…」
「お、男か?!」
「ううん、女の子二人となんだけど…」

そうか…と一瞬安心するがいやいや俺はデートを断られたのだった、再び落ち込む素振りを見せる。すると目の前の天使は本当、ごめんね。と眉をハの字に寄せては目を潤ませて謝ってきた。誰だ、こんな顔をさせる奴は!俺か。珍しく自己嫌悪になりつつも構わんよ!と明るくフォローしてみせた。


「と、いうことでだな荒北!俺は恋をしているのだよ。」
「るっせー知るかヨ!つーか話すなら新開に話せばァ?」
「な、ならん!あいつも女子人気は高いからな!」
「…それ、俺に失礼じゃナァイ?」

そう、新開にだけは知られてはならん。だから荒北にこうやって相談しているのだが何を聞いてもそうか、知るかよ、イイんじゃね?のワンパターンしか返ってこない。お前、本当トーク切れんな、と言ってやると舌打ちされた。酷い。

「その天使チャンはお前の事タイプじゃないんじゃねェの。」
「そ、そんな事があるのか!」
「いや、お前どんだけ自意識だよ。普通にあるだろ、つか疑えヨ。」

そそそんな事があるのか。そうか、では次会った時は苗字さんの好きなタイプを聞いてみるとしよう。…それで、聞いたところでどうしようか。それに近付くように努力すべきなのか。ううむ、考えても解決しそうにないので深くは考えないことにした。


「苗字さん!」
「あ、東堂くんこんにちは。」
「こんにちは。」

ああ可愛い!やっぱり天使だ。この笑顔を前にすると言いたいことが上手く言えなくなる。頑張れ東堂尽ハ、今が気張り時だ。

「苗字さんは、その、どんなタイプが好きなのだ?」

唐突すぎたのか、好きなタイプ?とキョトンとした顔をしている。その表情すらも愛らしい。

「うーん、自分が大好きな人かなあ。」
「そ、そんな奴いるのか!」
「うん。あ、あと鈍感な人。」
「…苗字さんは変わっているな。」

そう?と悪戯っぽく笑うと一瞬でまた心を奪われる。その瞳に俺を映してはくれないのか。自分で聞いておいて何だか切ない気持ちになる。あ、そうそう、と今度は苗字さんから話し掛けてきた。

「あのね、来週の日曜日だったら、予定ないよ。」
「…へ?」

それは、もしやチャンス再来ということなのか。感極まって「じゃあ、来週ランチいこう!」と少し声を張って言うと、「うん、デートしよう」と殺人的な笑顔で言ってきた。ああ俺は夢でも見ているのだろうか。


「名前ー、東堂君にデート誘われたんだって?良かったじゃん!」
「うん、でもね一回断ったんだー」
「え、何で?」
「突き落とした後に上げたほうが、喜びも増すじゃない?」

天使から聞いたその小悪魔のような発言に、女友達は思わず絶句した。


'140221 pike


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