シャワータイムラブ

「…。」

「…み、御堂筋君。」

「…早う着替え。ミーティングするで。」

バタン、と何事も無かったかのように部室のドアを閉められる。あれ?あたし今バスタオル一枚だよね?なんならお尻見られたよね?え、うそ。お嫁に行けない。しかもよりによってあの御堂筋君に見られるなんて。何とも言えぬ感情を抱えながらそそくさと制服に着替えて、ミーティングを始める連絡を皆に伝えに行く。

「もっとや…もっとペダルを回すんや。今のままやと足りん。箱学は張っ倒せへんで。」

ギョロ、と目を光らせる御堂筋君はここにいる誰よりも強い。強いから皆渋々でも御堂筋君の言うことをは聞くし、彼の組んだメニューは確実に皆を強くしている。今日のミーティングが終わると、昨日までの個人記録が書かれたノートを渡しに御堂筋君に駆け寄った。

「御堂筋君!これでしょ、さっき部室に取りに…来た、の。」

御堂筋君に話し掛けると座っていた彼が急に立つものだから、ガタンと椅子が倒れて長机の上に積んであった資料がバサバサと床に散らばった。

あーあ、と苦笑して資料拾おうと座り込むと御堂筋君がぬぅっと視界に入ってきた。彼がこんなヘマをするなんて珍しい。さっきのことなら気にしてないよ、と言うと今度は長机の角で頭をぶつけた。…やっぱり、気にしてたんだ。

「シャワー浴びとるなら鍵くらいしたらどうなん?裸見せてるようなもんやで。」

「ごっごめんなさい、いつもは鍵かけるんだけど…」

忘れてて、と言うとアホちゃうとため息つかれた。あれ?あたし御堂筋君より年上だよね?なんで怒られてるんだろ。

「石垣クゥン達やったらどうするつもりやったん?喰われてまうで。」

至近距離で睨まれる。あの、近いんですけど。他の部員はいつのまにか帰ってしまっていて、部室にはあたしと御堂筋君二人っきりである。この状況を把握した途端、ドクドクと心拍数が上がっていく。あれ、もしかして、あたし今御堂筋君に迫られてる?

「そないな顔してはったらボクぅが喰ってまうで、」

名前ちゃん。と耳元で言われた頃にはもう心臓が壊れそうで、一刻も早くこの状況から逃げたかった。あ、み、どうすじ君。恐る恐る彼を上目に見上げると「…冗談やよ。」とだけ言って立ち上がると振り向きもせず部室を出て行った。

心拍数が収まらない。息が苦しい。ふと壁にかかった鏡を見ると顔は真っ赤になっていた。これじゃあまるであたしは御堂筋君を…

「好きになったみたいじゃん…」


それからというもの、シャワーを浴びる時は忘れずに鍵を掛けるようにした。「ちゃんと守ってるんやね。」御堂筋君に後ろから声掛けられると同時にあたしは持っていた資料の山を地面にぶちまけた。


'140209 pike


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