欲張りな感情



期末試験も無事終わり、学年の順位が掲示板に貼り出された。みどうくんは相変わらず不動の一位。あたしもなんとか一桁におさまったのでそこそこ満足だった。これも勉強を教えてくれたみどうくんのおかげなのでお礼を言いに隣のクラスへ遊びにいった。

「みどうくんのおかげで成績良かったよ。ありがとう」
「ほうか。なら良かったわ」

ちら、とあたしの方を見てはすぐ逸らされた。こうやって一緒にいるだけで幸せを感じる。今までは、そうだったんだけど。

「本当にみどうくん、あたしの事好きなんかなぁ」
「何、不満なん?」
「別にそういうわけじゃ…」

あるかも。好きって言われたこともなければ、恋人らしいことなど一つもしていない。あたしから仕掛ければいいんだろうけど、そんな破廉恥なことしたらみどうくん困ってしまうんじゃないかなって思って何も出来ないでいる。

「で、どこまでいったの?」
「何が?」
「したの?……エッチ」
「はっ?!え、いやまままさか!」

なーんだ、とがっかりされた。そんな、いくらなんでも早すぎない?まだ付き合って4ヶ月くらいしか経ってないし。そう言うと「思春期の高校生なんて普通やけどな。すぐヤるで」…そ、そうなん。そりゃ前付き合ってた人とはキスまでは済ませたけど、期間も短かったし、そういう知識は全くの無頓着だ。

「キス…すらしてないよまだ」
「マジで…?したいと思わへんの?」

思わん…こともないけど。だってしたいって思っても出来るものじゃないし。みどうくんはしたくないかもしれないし。「好きな子とチューしたない男とかこの世におるん?」…そりゃそうかもしれないけど…。

「ま、がんばりや。好きなんやろ、御堂筋のこと」
「うん、大好きぃ」
「…ホンマあいつにはもったいないわ!」

ひしっと抱き着かれた。苦しい。でもありがとう頑張るよ!さっそく今日一緒に帰ろう、とメールを送信した。


「自転車で来たん、珍しいな」
「うん。朝ギリギリやったから」
「…貸し」

自転車を押していると奪われてしまった。サドルを思いっきり上げると、ん。と言って自転車に乗ってしまった。

「え?」
「え、やあらへんわ早よう乗り」
「乗せてくれるの!」

意外すぎて少々戸惑ったが鞄をカゴに乗せるとすぐ後ろに跨った。どこを掴もうか迷っていると腕を掴まれて強制的にみどうくんの腰に回された。まあ、これが一番安全なんだろうけど、そのみどうくんの行動が意外すぎて自分の顔が熱くなるのがわかった。

「みどうくん」
「なんや」
「…大好き」
「…ほうか」

みどうくんは?と聞く前に、ボクやって何も思ってへん子にこんな事するほど暇ちゃうで。と言われてしまった。え、それって。

「それって好きってこと!ねぇねぇ」
「そう聞こえたならそうなんと違う」

嬉しすぎて大きなその背中に抱きついた。学ランからみどうくんの匂いが胸いっぱいに広がる。幸せを噛みしめる。

「みどうくん」
「今度はなんや」
「キス、したいなぁ」

キィィ、と急にブレーキをかけられた。いきなりのことで鼻を思いっきりみどうくんの背中にぶつけてしまった。痛い。どうしたの?と聞くと降り。と言われた。…あれ、もしかして今のマズかった?

「ボク、ここ右やから。ほな」
「う、うん!ありがと。またね」

自転車を降りてからはみどうくんの表情は見えなかった。一体どんな顔をしていたのだろう。


140311



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