水田信行の好奇心



「お前聞いてこいよ!」
「イヤや!お前が聞いてこい!」

後ろのほうでやいやい言っとるの全部聞こえとるで、水田くんと山口くん。ちら、と目をやると山口くんが話しかけてきた。なんやの。

「御堂筋くんがいつも話してる女の子って、付き合うとるんか?」
「ハァ?」

こいつも名前ちゃんと同じ事聞くんやな。なんでこうも付き合うとるとか付き合うてないとか聞いてくるんやろか。否定こそしないが自分で言うのもなんやから「うるさいで、早よ準備しい」とだけ言って二人より先に部室の外へ出て行った。


「やっぱ付き合うてないやん!適当言うなやノブ!」
「いや…でも結構見るんやて、二人でおるの。しかもめっちゃカワエエのや!」

ほんまかいな、と山口から疑いの目で見られる。確かにそうや。結構前から二人でおるのは見てる。密かに隠れて見るから、御堂筋くんにはバレてないはずや。それが昨日、一緒に帰っているのを目撃した。あの御堂筋くんが、やで。これは絶対何かあるはずや。ここ最近御堂筋くんのタイムが伸びてきてるのも、なんか関係してるんとちがうやろか。そう思って今日一日御堂筋くんに探りを入れようと目論んだ。

今日はAコースの練習レースや。スタートと同時に離されんうちに御堂筋くんの横につく。

「今日はええ天気やな、御堂筋クン!」
「見て分かるわ、無駄口叩くな阿呆」

こっちを一切見ようとはせずにそれだけ言うと引き離しにかかる。まだや!まだ諦めへんで!慌てて追いかけるとジロリと大きな目で睨まれた。

「御堂筋くんが一緒におる子、カワエエな!俺らの中でも噂なってんで」
「…ほうか」
「(そこは否定せんのやな…)それでな、御堂筋クンがもし付き合うてへんのやったら、色々知りたいなー思ってな、あの子の事」

因みにクラスの友達からも言われてんのや。あのヒョロ長い男、チャリ部んとこのやろ?紹介してくれ、てな。周りの奴らは御堂筋くんとその女の子が付き合うてるとは思ってもないみたいやけど。

「…やめや」
「ん?何?」
「名前ちゃんにちょっかい出すのやめろ言うとんねん」

そう言うと御堂筋くんは一気に加速してもうた。あかん、追いつけへん。それより何や?今の。やっぱ付き合うとるんか?名前ちゃん、いうのかあの子。待って、御堂筋くん、俺まだ聞きたいことめっちゃあんのやけど!抑えきれない好奇心を胸にケイデンスをあげて御堂筋くんの後を追った。


「山口!やっぱ御堂筋くんの彼女や!」
「は?なんで分かるんや」
「それがな、…あ!御堂筋くん」
「なんやの」

部活を終えたところに御堂筋くんがやってきた。心底うざったそうに見てくるけどこの際どーでもええわ!

「やっぱり御堂筋くんの彼女やったんやな!」
「せやったらなんなん?騒々しいわ、黙ってくれる」

ホラな、と言わんばかりに山口の顔を見た。驚いてる。めちゃめちゃ驚いてる。せや、否定せんのや、彼女やいうことに。この日の任務を終えた俺は清々しく部室を去った。


140306



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