恋人はじめました



名前ちゃんがよく笑ってくれるようなった。その笑顔は、前よりもキラキラして眩しいとさえ感じた。今日はボクの部活が終わるまで待つと言ってきたので遅くなるから先帰っとくよう言ったがイヤや言うのでしぶしぶ承諾した。それから、名前ちゃんがちょいちょいコッチの言葉を話すようになった。周りの奴らにつられて戻ったらしい。もともとは京都に住んでたのやから、別にええんちゃう。と言うととても嬉しそうにしていた。

「みどうくん!」

部活が終わり校門に向かうと名前ちゃんが元気に手を振っていた。恥ずかしいから止め。そういうとあ、ごめんね。と手を後ろに隠した。季節は秋。夕方になると涼しい風が肌をかすって心地よかった。

「もう来年のインターハイに向けて練習してるんだね、すごい。」
「当たり前や、来年こそはインハイ制するんよ。このままじゃアカンわ」

そっか、頑張ってね。と笑顔で言ってくる名前ちゃん。他のザクに言われたら苛つくその台詞も、名前ちゃんやったら温かくなる。するとあーとかうーとか唸り始めた。なんや言いたいことあるなら言いや。

「その、あたしとみどうくんは…あの、付き合ってるんよね?」
「ハァ?」
「えええ、うそ!まさか、違うの?」
「…どっちでもええわ。名前ちゃんが横におってくれれば」

そういうと返事が聞こえなくなったので名前ちゃんのほうを見ると顔を真っ赤にして突っ立っていた。なんやのその顔は。すると自分で言ったことを思い出してボクまで恥ずかしくなった。別にちゃうよ、他のザクと違ってイヤラシイ事するために恋人になったんちがうんやで。名前ちゃんが大切やから、一緒におるだけや。ボクの側に置きたいだけや。…そんな事口に出してよう言わんけど心の中ではそう思っていた。名前ちゃんの顔を見るとまだ腑に落ちてないようだったので、「まだ何かあるん」と聞いてみた。

「やっぱり、今までとは違う関係っていうか、近くなったし…いわゆる恋人だよね?こういうのって」
「…名前ちゃんがそう思うんならそうなんとちがう」

名前ちゃんの表情が明るくなった。その顔が見れるならええわ。なんでも。

「じゃあ交換せなやね携帯番号!」
「…今持ってへん」
「え。ケータイは携帯せな意味ないよ?」

そう名前ちゃんは言うけど今までケータイ必要な要素なかったし。今だって名前ちゃんと別にわざわざケータイで連絡取らんでも、こうやって直接話せるし。そう言うと「携帯番号くらいは、知っとくもんだよ」と言われた。そういうもんなん。ボクにはわからへんやった。

「なら明日持ってくるわ」

そう言ってボク達は分かれ道でさよならした。


140302



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