初めて貴女を見た時は全身に電気が走ったようだった。綺麗な人だ、と。岸神小鞠です、そう自己紹介すると大して興味なさげによろしくね、とだけ言われてそれからすぐに「翔は?」と部室の前で辺りを見渡していた。御堂筋さん…先輩と仲がいいのだろうか。少しいやとても意外で思わず質問に質問で返してしまったのを覚えている。

「御堂筋さんとお知り合いですか?」

プッと吹き出された。何か可笑しな事を言っただろうか。でもその笑顔がとても眩しくて不愉快な思いをすることはなかった。

「幼馴染みだよ、翔の。一つ上のお姉さん」

岸神くんの二つ上かなあ。それにしても御堂筋さん、て。翔にも後輩ができたんだ。と名前を呼ばれた時には柄にもなく心臓が跳ねた。するとそこに御堂筋さんが現れるとさっきのボクを見るそれと違ってやけに嬉しそうな目で彼を見ていた。

「何しに来たん、名前ちゃん」
「はい、お弁当。作ってきてやったよ」
「ハァ?誰も頼んでへんし。いらん」

目を疑うような光景だった。あの御堂筋さんが幼馴染みの女の人に弁当を作ってもらっている。名前は名前さんというらしい。その名前さんが豆腐ハンバーグだよ、と言うと御堂筋さんは無言で受け取っていた。ああボクはこの時すでに名前さんの虜になってしまっていたんだと思う。


「名前さん今日もお綺麗です」
「ああ、そう。ありがとうね」
「フフ…本当のことですよ」

それから名前さんはほぼ毎日部室に顔を出すようになって、ボクと話すときは(一方的に名前さんを褒めているときは)大抵目を合わせてはくれない。多分ボクに興味がないのだろう。

「名前さん、マッサージしましょうか」

そう言うと意外にも食いついてきた。どうやら御堂筋さんからボクの腕は聞いていたらしい。名前さんをうつ伏せにさせてその上に跨るとそれだけでボクは生唾を飲むほど興奮した。

「あー気持ち良い。そこそこ」
「名前さんの筋肉は最悪です」
「筋トレしてないから仕方ないじゃん」

フフ、そうですね。名前さんを仰向けにさせると手を太腿へと忍ばせた。バッと頭を起き上がらせて驚いたように見られたが「マッサージですよ」と言いくるめた。撫でるように舐め回すように、優しく名前さんの身体を撫でていくと甘美な声を出した。気分を良くしたボクはその手を腹部、腕、首筋と次第に名前さんの顔に近付いていった。名前さんの火照った顔がボクの瞳に映る。なんて扇情的で綺麗な表情だろうか。ゾクゾクと背筋が疼いてはそれを抑えるのに必死だった。

「岸、神…なに」
「小鞠です。ボクの名前」

名前さんを組み敷いたままひた、と名前さんの左頬に手をやるとその柔らかそうな唇をキュッと結んでボクの目をひたすら見ていた。堪らずその唇に喰いついてやると、もっとと言わんばかりに首に手を回された。ああ、駄目だ。溶けてしまいそう。

「貴女が欲しい」

組み敷いたまま激しくキスをすると片足がボクの腰元に乗っかってきた。それから名前さんの耳元で言葉を囁いて彼女の襟元に手を掛けるとそこに御堂筋さんが入ってきた。その目はいつもの倍大きくなっていて「な、なに」と珍しく言葉を吃らせていた。

「…何、してるぅん小鞠」
「あああ、あ翔!あのこれは」
「マッサージしていました」

ああ、そう。御堂筋さんは不審そうにボクのほうを見ると、帰るで名前ちゃん。服直し。そう言って名前さんの手を引いて出ていってしまった。名前さんは帰り際にボクのほうをチラリと向いてはまた逸らした。「小鞠だけはやめとき」そんな言葉なんて耳に入らなかった。

それから名前さんはボクの目を見て話してくれるようになった。そろそろこの間の返事を聞かせてくれませんか。そう言うとまだ触れてもいないのに顔を真っ赤にしていた。ああ貴女は本当に綺麗で可愛らしい。


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