あとは会計書いたら今日のノルマは終わり。そう自分に言い聞かせると古びた会計ノートを開いた。少し埃っぽいこの部室も掃除しないといけないな。時刻は18時手前。部員の皆は外周に行ってるはずだから、帰ってくるまでには自分の仕事を終わらせよう。そう決めて自分のペンケースからから一本ボールペンとそれからスティックのりを取り出した。作業を始めて数十分。あくびを押し殺すのはこれで何度目だろう。チラ、と腕時計に目をやるとまだ部員が帰ってくるまで時間があったので、机に突っ伏してそのまま眠気に負けてしまった。


今日も真っ先に外周を終えると、すっかり汗を吸い取ったユニフォームを着替えに部室に向かう。中に入るとマネージャーが体を丸くして机に突っ伏していた。近寄っては耳元で大声出すつもりだったが、なんとも幸せそうなその寝顔を見るとなんとなく気が失せた。

「苗字」

試しに名前を呼んでみたがピクリともせず無反応だった。仕方なくそこらへんに置いてあったボクのジャージを苗字に被せてやった。風邪でも引かれて仕事増やされたらたまらんからな。するとボトルをロードレーサーに置きっ放しにしてきたことを思い出して部室を後にした。

「みみみみ御堂筋君!」

真っ青な顔で部室を飛び出してきては全力でボクのジャージを返しに来たのはその少し後の話。なんやキミィはありがとうの一言も言えへんのか。そういうと苗字は今度は顔を真っ赤にして「ありがとう」と大声で叫んだ。うるさいわ、アホ。



この恋心はいとも容易く

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