気付けば男部屋にはボク一人。ロードはボクより遅いくせに、なんでこういう行動は早いんやろか。重たい腰を上げて、ザクが揃って騒いでいるだろう大浴場に向かった。
脱衣所まで来れば意外と静かでやたらと高い声が薄っすらと聞こえるくらいやった。誰や一人だけ裏声使う奴は。本当はボク一人で大浴場を占領したかったが、それよりも今は早く寝床につきたかった。

ガラッと勢い良くガラスドアを開けると何故か湯に浸かった名前ちゃんと目が合った。何事もなかったかのようにすぐさま閉める。

「あれ、翔君。男湯開いてなかったの?」
「……。」

動揺した。ウソや、間違って女湯に来てもうたんか。アカン。今日のボクは相当疲れとるみたいや。腰にタオルを巻いてそのまま男湯に移動しようとすると風呂場の中から手が伸びてきて腕を掴まれた。

「一緒に入ろう」
「ハ、ハァァァ?イヤや、キモい、なんでボクが名前ちゃんと風呂入らなあかんの…」

昔は一緒に入ってたじゃん、て一体いつの話やの。抵抗も虚しく、結局湯槽の中に無理やり押し込まれた。…あのな、これ男女逆やったら捕まるんやで名前ちゃん。「翔君だったら良いよ」とかそういう問題ちゃうんやよ。それよりそんな事言わんでくれる。あとさっきからたいして大きくない胸が当たってるんやけど。

「名前ちゃん、ボクかて年頃の男の子なんやけど」
「うん。大きくなったねー」
「…ちゃうわ、そういう意味やなくて」

キモキモキモ!これ以上近付かんとって、やないとボクもっと大きくなるで。そんなつまらん冗談を考えられるくらいには動揺していた。肌が触れて気が狂いそうやった。湯から顔を出す鎖骨がいやらしい。

「わー!筋肉すごい」
「…やめや」

ペトペトとこっちの気も知らんと二の腕に触ってくる。…もう知らん。この状況でそういう事するいうことは、ええんよね。後でイヤ言うても知らんで。名前ちゃんの後頭部をグッと引き寄せると、その火照った頬をベロリと舐め上げた。

「あ、翔君…?」
「黙りや。名前ちゃんのせいやで」

ボクはなあんも悪くない。そう言い聞かせて湯気で濡れた唇に噛み付いた。ほんまにわかってるん?裸やでボクら。抱きしめればもう情事のそれに近いんやで。もし風呂に入ってきたのがボクやなかったらどうするつもりやったん。同じようにこうやって食われるん?

「ち…ちが…翔君って、気付いたからぁ」
「せやから何?」

鎖骨から首筋にかけて舐め回す。吸い付けば簡単に赤い痕がついた。一瞬目が合う。何を考えてるかわからんやった。なんでイヤ言わんの。なんで。お構いなしにまた唇を塞いでは舌で歯をなぞる。すると向こうから舌を絡めてきてお望み通りに舐めとってやった。

「翔君…が、意識してくれるかなって」
「…ハァ?」
「いつも一緒にいるのが当たり前、だから」

思わず舌を離して距離をとった。意識?そんなもん初めからしてるんやけど。こっちが気張って理性保ってたいうのに。ほんま名前ちゃん、鈍すぎるで。

「ふふ、翔君だって鈍すぎだよ」
「ファ?」

私も初めから、翔君の事見てたから。…そんな照れんでくれる。ボクまで移ってまうわ。これ以上は逆上せるから、先にあがるで、と言い残して名前ちゃんのほうを見ることが出来んかった。


「苗字さん、遅かったなあ!…ん?あれ、なんで御堂筋君とおるん?」
「やかましいわ」
「ふふ」

後ろで密かに繋いでいた手は多分誰にも見られてないと思う。

42℃に溺れる

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