ボクと苗字はひょんな事から付き合い始めた。

「苗字さんの好きなタイプてどんなん?」
「タイプ…?背が高くてロード速くて頭が良くて…まあ実は御堂筋君なんですけどね」

ガタン。別に盗み聞きするつもりは無かった。ボクがおるのに秘密の話するほうが悪いんやで。なんなら聞いてへんで。頭の中では言い訳はいくらでも思いついた。真っ青になる苗字と、一緒に話してた水田くん。

「みみみみ御堂筋君!今の聞いてへんよな…?」
「…別に聞いてへ」
「苗字さんが御堂筋君の事好きっていうん、聞いてへんよな?!」
「ちょっとノブ先輩うわあああ」

……今ちゃあんと聞いたわ、阿呆。顔を真っ青にした水田くんは「ほな邪魔者はこれで」と消え去った。気を利かせたのか何なのか、ボクからしたら居てもらったほうがよっぽど良かったわ。

「……。」
「…なぁ」
「うん、ごめんね、気にしないでね」
「まだ何も言うてへんやん」

え。と驚いた顔でボクを見上げられた。すると真っ青やった顔を今度は赤くして「好きです御堂筋君」とか言いおった。なんや可愛らしい顔して。

「ボク、キミィの事嫌いやないよ」
「えっ…」
「…耳遠いん?二回は言わんで」

それからや、付き合い始めたんは。苗字を気に入ってたのは本当の事。マネージャーのくせにどこか抜けてて、物はすぐ落とすし仕事は増やすしでいつも目が離せんかった。最初はトロい奴やなと思ってただけやったけど、たった一回苗字が落としたボトルを拾ってやった時。あまりにも可愛らしい笑顔で礼を言うもんやから、ボクの中に黄色が広がった。

「今日も速かったねー!ダントツだよ」
「当たり前や。誰がザクに負けるか」

帰り道もなんとなく一緒の方向だから、なんとなく一緒に帰る。人一人分の距離を空けて、たまに苗字がボクのほうを見る。気恥ずかしくて目も合わせんかったら、正面から顔を覗き込まれた。ピギィ。そんな見んとってくれる。そう言うと「だって御堂筋君私と目合わせてくれない」やて。仕方ないな、とジーッと苗字の目をただ一点見つめると今度は苗字のほうが目を逸らした。

「あ、あんま見ないで」
「キミが見ろ言うたんやろ」

苗字とまた距離を空けようとすると互いの手がかすった。

「ごめ、ん」
「…別に」

さっきから心臓がうるさいのは何でやろか。かすった左手が汗ばんどるのは何でやろか。今度は意図的にその右手に少し触れるとそのまま握られた。メチャ見とる。ボクのほうをメチャ見上げとる。目だけ苗字にやると照れ臭そうに笑った。分かってやっとるんやろか、それ。可愛らしいんやけど。

「なんか…恥ずかしいね」
「やめるか」
「ううん、それは嫌」

ぎゅうっとさっきより強く握り締められて、同時にボクの心臓も掴まれたようやった。

黄色い音がじゃまをする

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