「隠し事は苦手です」

ここ最近の苗字の様子がおかしい。今までおはようとさよならの挨拶は全部アイツのほうからしてきたのだが、挨拶は愚か無駄口を叩くような事も少なくなった。この俺が気ィ遣って「最近悪いモンでも食ったァ?苗字サーン」なんてふざけてみたが「別に、大食いなのはいつもですけど。」と目も合わせずにただ冷たく返された。オイオイ、俺はそんな返事期待してなかったんだけどォ。そうかヨ。とだけ返した時にふと見えた苗字の表情が心なしか悲しそうだった。…俺、怒らせるような事はしても悲しませるような事はしてねェつもりなんだけど。万が一原因が俺じゃなかったとしても、俺にこんな風あたり強くする必要はないんじゃナァイ。例えば俺が「元気ないなどうした?俺何か悪いことした?」くらい率直に聞ける奴だったら済む話なんだろうけど、そんなこと言えるはずもない。自分の中でハッキリしない状況が何日か続いた。

「荒北くん、部活頑張ってね!」

そんな事言ってきたのは苗字と仲がいいクラスの女だった。ったく、俺の一番嫌いな励ましの言葉使うんじゃネーヨ。あいつと仲がいい奴だから、あんま悪く言いたくねーから言わなかったけど。おう、とだけ返すとそそくさと部活に向かった。

「珍しいな、靖友がうわの空なんて。何、失恋でもした?」
「…勝手に終わらすんじゃねェヨ!」

恋してるのは認めるんだな、と新開にニヤニヤされた。くっそこいつ…!るっせ!黙れヨ!まー話聞くだけならいつでも聞いてやるよ、だなんて偉そうに上から言われて腹が立ったが少しほんの少しだけ言ってみようかと考えた。…すぐやめたけどォ。

「その相手、サヨちゃんじゃないよな?」
「…ハァ?なんでそいつが出てくるわけェ?ちげーよ、そっちじゃねェ」

そこまで言うと思わずハッとなってしまった。まずい。チラ、と新開のほうを見ると何かを悟ったような顔してやがる。

「ち、違ェヨ。苗字じゃねーからァ!」
「…靖友、お前ってバカ?」

俺、何も言ってないのに。うううっせーバァカ!誰がお前なんかに相談なんてするかヨ!俺はタイム縮めンのに忙しいんだヨ、ペチャクチャ喋ってる暇なんてねーの!分かったァァ?!


「で、苗字さんに避けられてるんだな。」
「…。(なんで俺はペチャクチャ喋ってんだヨ)」

上手いこと口車に乗せられたというか、つい喋ってしまった。すると新開はまー嫌われてはないと思うぞ、俺の口からはそれぐらいしか言えねーけど。とだけ言うと練習に戻っちまった。くそ、何だよあの全部分かった風な言い方はァ…。ますます気になっちまうじゃねーの。


'140226 pike


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