「おみくじの予言」

楽しかった修学旅行も終わって再びかったるい授業が始まる。夏だから体育プールなんだけどさ、プールの後に現国とか超眠いんですけど。先生達ちゃんと考えてほしいな。クラスの半分以上の生徒が居眠りしててもこれは仕方ないわ。ということであたしも寝ますおやすみなさい。

「堂々と居眠りしちゃっていいのォ?苗字サン」
「…気持ち悪い呼び方やめてくれる。あんただって人のこと言えないでしょ。」

机に突っ伏したままくるりと正面を荒北のほうに向けると、荒北もあたしと同じ姿勢で顔を見合わせた。なんだか無性に恥ずかしくなったので上体を起こした。「まぁ、俺は寝るけど。」…それはズルいんじゃない?

今日の授業が全部終わってHRが始まる。するとさっきまでだらだらしていた荒北が途端に落ち着かない様子で貧乏揺すりさえしていた。…すごいな。そんなに部活に熱注いでんだ。なんて相手を素直に褒めるようなことは間違っても言えないけど心の中で尊敬した。

「じゃあね。」
「ん。」

素っ気なくてもちゃんと返事が返ってくる。荒北は本当はいい奴なんだよね。知ってる。きっと部活も誰よりも努力しているんだろう。なんか、そんな気がする。部活姿、見て見たいななんて思っていた矢先。サヨちゃんから一緒に帰ろうと言われたので、いつも通り並んで下駄箱に向かった。

「あ、そういえばね、名前に報告があるの!」
「え!何!まさか彼氏でも出来た?」
「まさかぁ、あっそういえば名前って荒北君の事好きなの?」
「……………は?」

話がぶっ飛びすぎて一瞬思考停止した。いや、まさか、あり得ないし!何で、あははは!なんてちょっとやり過ぎたか?くらいの勢いで否定すると、そっかぁ、良かった。と笑顔で言われた。…ん?

「私ね…荒北君のこと好きなんだぁ。」

今までニコニコしていたつもりの笑顔が真顔に変わるのが自分でもわかった。えっマジで何でどうして?そう問い詰めるとサヨちゃんが少し引いていた。多分「あいつなんかのどこがいいの?」という意味で捉えているんだろう。いや、あながち間違ってもないんだけどどうしても平常心じゃいられなかった。

「部活、自転車乗って走っている姿見てカッコいいな、って思ったの。最初は、それだけだったんだけど、それから段々意識するようになってきて…」
「そう、なんだ。へー」

相手があいつだから、心から応援できないけど。そう言うとサヨちゃんはまた笑顔になった。恋している顔。ああ、あたしこんな可愛い子に勝てる自信ない。荒北なんかにサヨちゃん取られたくない、なんてのはウソで本当は、荒北を取られたくない。あたしは最低だ。友達の恋は応援するのがジョーシキなんだから。もしさっきの質問にはいそうです、あたしは荒北が好きですって答えられていたら、何か変わったのかな。自分の気持ちにだけは正直なだけに、こんな形で恋が終わってしまうのはなんだか切なくなった。

「応援しててね」

そんなサヨちゃんの言葉に心が痛くなった。こうなること、神様はちゃんと分かっていたんだね。さあどうやってこの気持ちに踏ん切りつけようか。


'140225 pike


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