「グッジョブ迷子」

なんてこった。東堂達とはぐれちまった。そのせいで、というかおかげで苗字と二人っきりで京都を周ることになったんだが、いつも喧嘩してばかりだからこれと言って和気あいあいと話す話題を持ち合わせていなかった。だから気を利かせて「あー天気、いいな」とかどう考えても会話ベタな話題を持ち出すと「まああたしが晴れ女だからね、当たり前」なんてまたいつも通り喧嘩をふっかけてきた。そこからまたくだらない言い合いが始まるが、俺はこの距離感が心地よくてその、好きだ。
少し目を離した隙に箱に100円玉突っ込んでおみくじなんて引いてやがるからせっかくなので俺も一緒に引くことにした。

「吉か…」
「小吉…ぱっとしねェな。」

まあ凶出るより良いんじゃナァイ。いやむしろ凶とか滅多に引かないから強運かもな。なんとなく恋愛運に目がいく。素直になれ、か。自分でもわかってるがそう簡単にいかねェんだヨ神様。ちら、と苗字のみくじも盗み見てみた。

「恋敵現る、気をつけよ。か。」
「ちょ、何勝手に見てんの!」
「苗字にカレシなんて出来たら世も末だな。」

さっそく神様の助言に背いてそんな事を口に出す。もしかして好きな奴いんのォ?と冗談混じりに聞くと少し吃って否定された。…まじかヨ。これ、俺が素直になったところで報われねんじゃねーの?

「ほら、行こ!サヨちゃん達と合流しないと!」
「おう、そうだな。」

内心焦りだした俺。もし、もしもだ。苗字の好きな奴が爽やかイケメンとかだったら俺勝ち目ねェぞ。とすると、やはり素直になってこいつに気付かせるしかないんだろうか。ちょっとやそっとじゃ気付かなさそうな気もするが、何かしら手を打つしかないと思った。

「サヨちゃああん!」
「あ、名前!どこ行ったのかと思ったー。よかった。」

東堂と新開も一緒で、遅かったなと何か口に含んでいた。…お前ら食い過ぎじゃね?すると苗字の女友達が「荒北君も一緒だったんだね」と話しかけてきた。おう。こんな事本人には絶対に言ってやらないが、苗字と一緒にいるのは楽しいもんだとあらためて感じた。


'140223 pike


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