「神様のいじわる」

ぼーっと窓の外を眺めていると、HRが始まった。どうやら修学旅行の班決めとやらをしているらしい。あたしはサヨちゃんと同じなら何でもいいや、と話し合いを放棄していた。ふと横を見ると机に突っ伏している荒北が目に入る。そういやこの間の席替えで隣になったんだっけ。ねぇ、と話し掛けると無視されたのでおい、と低い声に変えてみた。

「ンだよ。」
「修学旅行、どこ行くんだっけ?」
「知らねーよ。京都かどっかなんじゃねェの?」
「あ、サヨちゃん、修学旅行どこ行くんだっけぇ?」
「オイ人の話最後まで聞け!」
「あ?だって荒北知らないんでしょ。」

テメ、だからっつって礼儀てもん知らねーのかヨ、礼儀何それ美味しいの?とまた喧嘩が始まる。すると委員長がオドオドしながら止めに入ってきたので渋々席に座る。あたしも荒北も舌打ちすると委員長がビクッと肩を震わせた。あっ、君にしたんじゃないからね。ちなみに旅行先は京都らしい。

「では肝試しは男女一組ずつ回ってもらいまーす。」

えー、やだーとか女子の悲鳴があがる。とか言っちゃって本当は意中の人と一緒に腕組んで回りたいんじゃないの?他人事のように楽しんでいるとペアを決めるクジが回ってきた。え?これ当日決めずに今決めちゃうの?腑に落ちないまま2の番号を引いた。

「2ィの人ー」
「2番ー」

ふと横の男と声が被った。まさか…と顔を見合わせると荒北もあたしと同じ2の紙を持っている。

「ハ!怖すぎて腕なんか掴むんじゃねェぞ苗字。」
「だぁーれーがー掴むかっての!こんだけ人相悪い奴連れて回ればオバケも寄って来ないわ。」

言ってくれるじゃナァイ?と額をヒクつかせる荒北を横目に内心では喜んでいたあたしだが、問題は肝試しは全くと言っていいほど怖くないことだった。やはり怖がったりキャッ、と悲鳴をあげるくらいが可愛らしいのだろうが、それを出来る自信はないし別にしたいとも思わなかった。もう少し女の子らしい性格だったら、と落ち込む一方、机に突っ伏していた荒北の表情をあたしは知らなかった。


'140221 pike


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