「私語は慎んでください」

「…靖友。あんた本当に現代文ヒドイね」
「るっせ!大体筆者のキモチなんて知るかヨ」

センター試験が迫ってきた今日この頃。人の面倒をみる余裕なんてないはずなのに、あたしの目の前にいる、この男の模試の採点結果を見て頭を抱えた。数学は安定してそこそこの点数なのに、この現代文のせいで相殺されている。

「最初の語句しか合ってないじゃん…」

大きなため息をついていると、見せてェ、とあたしの採点結果を半ば強引に奪われた。

「…マジ?何だよこのバランスの良さ」
「努力は実るのだよ荒北君」

だてに三年間、帰宅部やってませんのでね。そう言うとヘイヘイと軽くあしらわれた。理系科目は靖友のほうが点数良いんだけどね。ただ…総合的に見ると、ね。そのまま目を下に滑らせて行くと、あたしと同じ志望校である洋南大の横にはD判定の文字が堂々と印字されていた。

「名前チャンBかよ、やるな」
「Bでも油断できないからね」

珍しく机に突っ伏して落ち込む靖友の頭の上に結果用紙を乗せると、はぁぁと弱気な息を吐き出した。「無理だろ」ボソリと呟いたその一言に、あたしは目元をヒクつかせた。

「今何つった」
「…あ、あァ?」
「ロードじゃそんな事言わないくせに!弱音吐くなバカ!」

丸めた用紙で頭を引っ叩くと、珍しく反抗もせずただ「お、おう」と頷いた。

「ったく、今ので全部頭から抜けちまったじゃねェの」
「つべこべ言わずに解く!ほら解く!」
「ヘイヘイ」
「ヘイは一回!」
「…福チャンみたいな事言わないでくれナァイ?」


センター直前講義の放課後。ぎゃあぎゃあと小学生のように騒いでいるとついにサヨちゃんにすごい形相で怒られてしまった。

センター試験の結果に度肝を抜かれたのは、その二週間後の事である。

「…え、この点数本気で言ってんの?」
「おー野生のカンが当たったらしい」
「(…あたしより良い…)」


'140715 pike


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